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〈ユメ〉夢詩〈ウタ〉

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三の夢~雨降りと帰りたい人達のコト~








その『海』には、これでもかというくらい大きな『葉』が浮いている。その『葉』と『葉』の間を、木で造られた橋がつないでいる。短いのもあれば、長いのもある。
 

その橋を使って、『葉』の地を渡り歩いている人影が、二つ。


一つは、真っ黒のフード付マントに、真っ黒の長袖シャツ、真っ黒のズボンに、金の留め金具がついた黒いブーツといった、不気味なまでに黒い格好をした、髪の毛もこれまた真っ黒な少年だった。
かけている眼鏡も黒ぶちで、めがねの奥からのぞく紫水晶のような瞳と、首から提げている太陽の形の首飾りが放つ金色の光が際立っている。
少年は、右手に茶色の紙包みを、左手には、大地と同じ形の『葉』を傘代わりに掲げて雨を防いでいるが、この終わりない雨と、もう一人をかばっているせいで、服も髪も紙包みまでもがずぶぬれだった。

もう一人は、少年と対照的に、真っ白のフード付マントに、真っ白のワンピース、コバルトブルーのスパッツ、銀色の留め金具がついた茶色いブーツを履いていた。
フードに隠れた髪はショートからセミロングへ変わるぎりぎりの長さで、細めている瞳の色と同じ、綺麗なすみれ色だった。首には少年とまた対照的に、月型の銀色の首飾りを下げている。
こちらは小さな茶色い紙包みを、両手にしっかり抱えている。少年が『葉』の傘を掲げてくれてはいるが、少年に負けず劣らず、ずぶぬれだ。


「瑠璃、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫よ。光暉君こそ、大丈夫?」
「僕は大丈夫ですよ。とにかく、急がないと」
「うん。早く『家』に帰りたいな・・・」
「後15分くらいで着くと思いますから、辛抱ですね」
「ほんと・・・こんなことなら琥珀達を連れてくるべきだったのよ・・・」
「仕方ありません、この雨は予想できませんでしたからね。まぁ、この『世界』で何かを予想するのは、難しいですけど・・・」
「『望み』は形になるのにね・・・」
「自然だって同じです。雨も、降りたいときに降りたいのでしょう」
「それもそっか・・・」
「さぁ、早く行きましょう。『目覚め』る前にこうなっては、『後』がひどくなりそうですよ」
「うん」


ざぁざぁと降りしきる雨の中、一つの頼りない『葉』の傘を掲げて、二人は進む。
『家』を目指して。




熱く垂れ込める雲から降り注ぐこの雨は、終わりそうにない。


作品名:〈ユメ〉夢詩〈ウタ〉 作家名:千華