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〈ユメ〉夢詩〈ウタ〉

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一の夢~夢でも働き、夢でも眠る人達のコト~








「・・・とか何とか言ってるけど、結局わかんねぇよ」
「そう?結構わかりやすく、言ったつもりなんだけど・・・」


その声は明らかにむっつりしており、その声は困ったようであった。

声の主達がいるこの場所は、当人達にとっては居心地いいことこの上ない。


その広さは半端がなく、東京ドームと比較するには全然及ばないのだが、一般の陸上競技場と同じくらいと思えば、かなり広いだろう。
地面に敷かれたカーペットは温かみのある薄赤色で、そこらじゅうに散らばっている形様々のクッションもまた、色は様々だが、みんな色が薄めだ。いわゆる、パステルカラーである。

広い部屋の中心部には、子供が8~10人くらいで手をつないで囲めるほどの、太い柱が一本。その柱を見上げると、おそらく首が痛くなるであろう。まず見えない。それくらい、天井が高いのだ。
これだけ高いと部屋の中はかなり寒くなるはずだが、柱をらせん状にぐるりと囲むように下がっている無数のランタンと、柱の根元に間隔をあけて三つある、レンガ造りの暖炉で爆ぜている明るい炎が、この空間に暖をもたらしている。


その暖炉のひとつのすぐそばにあるテーブルには、この場所に似つかわしくない、プリントやら書類やらの紙の山がどっさりと詰まれ、さらに似つかわしくないのがその中心部におかれたテレビ、そして黒いノートパソコン。


そのノートパソコンに、先ほどからなにやら打ち込んでいる少女がいた。


セミロングよりも若干長い茶髪をリボンでポニーテールにしており、リボンよりも少し薄い橙色の半袖ワンピースにクリーム色の長袖シャツを着ており、クリーム色のスパッツと、ワンピースと同じ橙のふわふわしたスリッパを履いていた。
絨毯と同じ、薄赤色の柔らかそうなソファに座り、その手はキーボードをたたき、マウスを動かしていた。そして、真剣に画面を見つめる目は、綺麗な紅茶色である。


「もう一度説明したほうがいい?」
「冗談じゃねぇよ・・・なんだってあんな長ったらしい話・・・」
「説明してほしいっていったの、十夜君じゃない」
「風葉の説明はわかりにくい」
「もう・・・じゃあどうすればいいのよ・・・」
「別にいい、どうだって」
「どうでもいいわけないじゃないの・・・」
「もーいい、俺寝るから」


少女のすぐ後ろにある、少し大きめのソファ。そこで寝返りを打つ少年を、『風葉』と呼ばれた少女はあきれた目で見つめ、はぁ、とため息をついた。


『十夜』と呼ばれた少年は、常盤色の、男の子にしてはちょっと長めの髪をがしがしと手で掻きながら、ソファに体を埋めている。
黒の長袖シャツに深緑のベストを羽織っており、こげ茶色のズボンとこげ茶色の柔らかめの靴を履いた足を、ためらうことなくソファに放り出している。
このパステルカラー溢れる部屋の中で、少年の出で立ちはかなり映える色合いだった。



完全に不貞寝を決め込もうとしている少年に向かって、少女はつぶやいた。




「この世界じゃ眠ったって、目が覚めるだけなのに・・・」




さらに、山と詰まれた書類を見て、またため息をつく。
 



次の『目覚め』が来るまでに、終わりそうにはない。


作品名:〈ユメ〉夢詩〈ウタ〉 作家名:千華