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YEAH!! 年末

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YEAH!! 年末


 木枯しと野良猫はなかなか絵になる。仔猫だったりすると、なおさら憐れを誘っていい。コンビニの雑誌コーナーで立読みを終えた影山は、駐車場のそんな光景に目を止め思った。
 唐揚とチーズカレーまん、缶コーヒーを買って、外へ出た。暖かい店内から一気に冷たい木枯しになぶられ、肩を縮こませる。不意に、足に猫がまつわりついた。まだ若い三毛だ。影山は反射的に蹴飛ばした。俊敏に避けた猫の手応えを爪先に軽く感じる。丁度駐車場に入ってきた車の前に落ちたが、そのまま駆け逃げ塀の上から影山を見下ろしている。
「ケッ お前らにやるオコボレなんかねーよ。どっか行け」
 見下ろす視線を返し、影山は唾棄した。
 夕暮れ間近の町は、クリスマスに浮かれている。店先からはクリスマスソングが流れ、ツリーが飾られている。首をすくめ猫背気味に足早な人々は相変わらずだが、その手にいかにも大きなプレゼントらしい荷物があったり、イルミネーションを見上げるのは笑顔だったり。そんな幸福感を盛り上げる年末商戦のおかげで出費はかさみ、貧しい人々をなお追い詰める。やたらと世知辛い事件のヘッドラインも重なって、持てる者と持たざる者の明暗を否応なく思い知らせるこの季節の空気が、影山は案外好きだった。
 馴染みのパチスロ店内のベンチに腰掛け、買った缶コーヒーを開ける。
「よう、最近景気よさそうじゃねぇか」
 先に端に座っていた男に、それとなく声をかけた。いかにも浮浪者然とした男は、ちらりと影山を見て笑った。
「こりゃ──へへ。厄病神の旦那にはかないませんや」
「よく言うぜ。近頃じゃ貧乏も飯の種になるからな。お前らにはいい時代だろ?」
 げっげっげっと、咳き込むような濁った笑いで男は答えた。そうして影山は軽食をとりながら、悲喜こもごもに出入する人々を眺める。その内の一人に、男はそっとついて出て行った。じゃあ、と影山に軽く頭を下げて。
 

 街灯の光も鈍い鉄骨階段を昇る。廊下は暗いけれど、部屋の小窓から灯りが差している。いつもの部屋の扉を、影山は挨拶もなく開けた。
 一瞬の殺意と共に鋭い爪が空を切る。
「ぎゃーっ!」
作品名:YEAH!! 年末 作家名:蒼戸あや