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瞳 ~あなただけを見つめる~

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 恋人が出来た。
 とはいってもオレにではない。オレの好きな奴の、そのまた幼馴染に。その幼馴染の恋人は、オレの好きな奴の友人らしい。
 黒のケータイを閉じて目も閉じる。
 ダメだろ。そんなこと、お前に片想いしてるオレに「幸せそうでよかった」なんてメールしちゃ。知ってんだぞ、オレ、お前がその幼馴染のこと……。

   * * *

 おはよー。オハヨー。お早う。
 朝っぱらから蒸し暑く気だるい七月の朝。期末テストがいろんな意味で終わったあとだから先週のような焦りはないけど、これからその解答用紙が返って来ると思うとやっぱり気だるい。それよりも何よりも、金曜のメールのせいで気だるい。
 椅子を机の中から出して、鞄を引っ掛けながら座る。そんなオレに気付くこともなく(気付いても気にすることもなく)、隣の席の奴は廊下の端を頬杖ついてじぃっと見つめていた。
「そんなに気になる?」
 今日はピンク。律儀に曜日毎に色を決めて替えているのをブラウス越しに観察されているとは、こいつは想像もしないんだろう。
「夏山……」
 振り向いたそいつは、今初めてオレの存在に気付いたようだった。別に落胆はしない。いつものことだ。むしろ気付いてもらって嬉しい。
「ハヨ、大塚」
「気になるって……何が」
 染められていない、短く切り揃えられた髪を耳に掛ける。
 大塚の見ていたものは、大塚の幼馴染である真下弘樹。それと、大塚の中学来の友人である小板橋茜。
 大塚の隣の席に座るようになって約一ヶ月、それ以前から見ていたからそのくらいの情報は軽いものだ。男勝りとまでいかないが“女らしさ”からどこか一歩退いている大塚には、オレのような男子の知り合いのほうが多い。
 真下は俗にいうイケメンである。そこに美人の部類に入る小板橋が並ぶと、絵になった。何だか羨望とか嫉妬とかいろんな感情がないまぜになるが。
「別に。じーっと見てるから」
「……見てない」
 そう言いつつ廊下に視線をチラチラと忙しい。ただのクラスメイトであるオレなんかに構ってる暇なんてないってかんじで、オレはやれやれと溜息を吐いた。
 このままじゃダメだ。ダメなままじゃダメだ。一歩踏み出すなら、今日しかないかもしれない。
「あのさ」
「……何」
「オレ、失恋したんだ」
 大塚の瞬きが止まった。訝しそうに肩ごとオレに向いて、「……へえ」と疑問形で先を促した。よしよし、食いつきはいいぞっと。
「傷の舐め合いってワケじゃねーけど」
「……合い?」
 ぱっちり開いた目は大きく、光をたくさん入れて綺麗だ。名は体を表す、瞳という名前の女の子に笑いかける。
 夏山清司、一世一代の賭けをします。
「大塚、オレと付き合わねぇ?」