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TheEndlessNights(1)

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未だヘタリ込んだままの弥月の頭に、ふわりとその何かが着地した。
これは?
『剣道部から要らないのを譲って貰って来たの。そんな血塗れの布で持ち運んでたら、学校に辿り着く前に手が後ろに回るわよ?あいつはそゆとこ気が回らないから』
何かを手にとって広げる。それは、浅黒い色をした細長い布袋。竹刀袋だった。
いや、それより。あいつって誰だ?そいつも化け物なのか?
『誰?そう、覚えてないの?そうね、人の皮を被った悪魔って所かなぁ?』
悪魔?
ますます、分からなくなった。自分たち以外にもこんな奴らがあちこちにいるのか。
それとも、もしかして、知らなかったのは自分だけなのか。
『考えすぎよ。まぁ当たらずとも遠からずだけどね』
どおゆう事だ?もったいぶるな、ハッキリ言ったらどうなんだ?
『化け物は私たちだけじゃないわ』
いざ、言われたら言葉が出なくなった。
死体が、化け物が、この世界を、この国を、この町を歩き回っているのか。
そんな。じゃあ、自分達がいままで享受していた平和って、何だ。
警察に知らせたらいいのか?いや、自衛隊か?
いいや、それ以前に、早く家族に伝えないと。いや、逃げないと。
逃げるって何処に?何処に化け物が潜んでいるのか、誰が化け物なのかもわからないのに。
それ以前に、自分自身が化け物だ。化け物、こいつらの目的は何だ?
なんで人間に混じってる?なんで俺を化け物にした?なんで?
『ホラ、そうなるじゃない』
うるさい。あんたは一体なんなんだ?あいつって誰だ?目的はなんだ?なんで俺を化け物なんかにしたんだ?
なんで、なんで俺なんだ!?
『落ち着きなさい』
射抜くような眼光だった。怒りそのものを湛えたようなそんな光を宿した、紫の瞳。
弥月は、それに射抜かれ、そして刹那に、頭を埋め尽くしていたあらゆる思考が止まる。
そして、その上から、新たな感情が一面に上塗りされていくのを感じた。いや、本能といっても言い。
即ち、それは恐怖だった。
人の怒りに触れたとか、そんなものものではない。
巨大な蛇に睨まれている様な、眉間に銃口を押し当てられている様な、絶対の高度に渡されたロープの上に立たされている様な。
そんな、「死」に近い本能。
そんな本能を突きつけられた時、人に出来る事などただ一つ。身を強張らせて、止まる。
それだけだ。
『貴方は車に撥ねられた時、誰か別の人が撥ねられればよかったと言うの?
貴方以外の誰か、例えば大切な人でも、
自分に代わって死んでくれと願うの?化け物になればいいと思うの?
貴方に起こった不幸は誰でもない、貴方だけの現実。それは同情するわ
ただ、貴方にも私にも選択する権利があった。
貴方は、願ったのでしょう?縋ったのでしょう?
貴方が縋り付いた世界は、こおゆう世界なのよ。
それでも、受け入れたくないと願うのなら。その願い私が聞き入れても言いわ』
言い返す言葉等なかった。
なんの事はない、彼女は恐らく、自身と似た境遇なのだろう。そう、わかった。
考えてみれば、直ぐに分かる事だった。いや、最初からそう言っていた。
それを目の前にしてなお、自分は自分可愛さに気をやっしていた事実が自然と飲み込めた。
俺は、何をすればいいのだろう?どうすればいいのだろう?
『まぁ、ゆっくりやってこうよ。奴等は、そのうち嫌でも向こうからやってくるからね』
先程とは打って変わって、彼女は元のやわらかい雰囲気に戻り、言葉を続けた。
『貴方が望む臨まないに関らず、周囲は動いていくわ。貴方や私に出来る事は、それに自分の方法でついて行く事だけだから』
彼女は、踵を返し、弥月に背を向けて歩き始めた。その方向は彼等の学校がある方向だ。
弥月は、声を掛けて静止しようとした。静止してどうしようか等、何か考えがあったわけではない。ただ、心に少し、罪悪感があった。彼女の事も考えず取り乱した事を素直に謝罪しようと思ったのかもしれない。
『ああ、「あいつ」のヒントというか答えだけど』
だが、実際に弥月が声を掛けようと思うより早く、聖は歩みを止め、半身で振り返った。
『向こうから直接、呼び出してくると思うわよ、今日にでも』


『では、最後に、夏季休暇前に行った学力テストにおいて優秀な成績を残した生徒を選抜し、特別合宿を行うと全校に掲示していたと思いますが』
音響を通したややノイズがかった校長の声が講堂全体に響いていた。
特別合宿、この学校の名物行事である。
夏休み前に期末テストと同時進行で行われる学力テストの結果を受けて、優秀な生徒を選び出し、夏休みの間、勉強合宿を行うというものだ。
全体学力の底上げは補習で行われるのに対して、この合宿は突出に意味を持つ。学校側からすれば面子を担うものである。
まぁ、勤勉な学生以外には夏休みを棒切れで叩き潰すくらい憎らしい行事ではあるが、これが名物と称されるのには二つの理由がある。
一つは、期間中、選出生徒とその家族以外には公表されない「実施場所」にある。秘匿するわけは、他生徒の現場乱入によってのトラブル等や選出生徒の集中力を乱す要素の排除らしい。だが、基本的にはこの合宿は「賞与」との方針から実施場所は例年豪華な観光地が多いのだ。歴代で言えば、北は北海道から南は沖縄まで。京都、奈良、熱海に草津、果ては海外なんて事もあったようだ。当然、現地での24時間拘束など行われず、自由時間もある。ちょっとした条件付旅行にタダで行けると有ればそれを目標とする生徒だって少なくはない。
そして、もう一つの理由は
『今回、選抜される生徒は三名、三笠晴樹、凪原聖、そして、無双弥月。以上三名は、この後、詳細説明の為、職員室に来てください』
そう、この選抜常連メンバーにあった。
「……はっ?」
ここで、弥月は現実へと引き戻される。空耳?幻聴?
今、確かに自分の名前が呼ばれたような。いや、そんな筈はない。今まで学力関係で、いいや、それ以外でも賞与等貰った試しもないこの俺が。いや、それどころか選抜等という題目にひっかかった事もない、ジャンケンで欲しい人間を選ぶチーム戦競技ではいつも最後の方に一人だけ余って、「お前のチームに遣るよ」「いいよ、お前のチームにいれろよ」等と譲り合いの精神に涙を呑まされ続けたこの俺が?
ちくしょう、なんか寂しい思い出を呼び起こされてすごい悲しい気分になってきたが。そんなこんなで、こんなこと。
「絶対にありえん」
いや、まさか。凪原の言葉を信用すれば。大胆な形ではあるが呼び出したのは校長。
つまり、凪原の言う「あいつ」であり、俺が化け物になった真実を知る男は、校長?
恰幅がよく綺麗にハゲあがった糸目のあのおっさんが?化け物?
まさか、そんな。
いや、凪原の件で学習はしている。見た目なんぞ、なんの目安にだってなりゃしない。
あんな温厚そうな顔して、実は夜な夜な若い乙女を貪り歩いているのかもし……それはそれでいろんな意味でヤバイ気がする。いや、凪原曰くは人間の皮を被った悪魔と。ならば合点もいく。許すまじ、許すまじ校長!奴を放っておくと世界の乙女が危ない!うらやまけしからん!
と、ここではっとする。なんか、周りの視線が痛い。
作品名:TheEndlessNights(1) 作家名:卯木尺三