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雪合戦

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ピンポンパンポン♪

『あ―あー、マイクテス、マイクテス。生徒の皆さん、お早うございます。今日からまた学校生活が始ま―って、ちょっと!? 副会長何して』

ブツッ!

『よぉし! お前ら生徒会命令だ! 今から一時間雪合戦するぞー!! 部対抗で行い第一位から第三位までの部活は部費アップだ! そしてこのルールで何のメリットのない帰宅部達! どれか一つの部活に賭けて一位から三位にその部活が入っていたら、それ相応の金額を進呈してやるからふるって投票するように! 職員室前に各部のボックスが置いてあるから入れ忘れないようにな! ふっふっふっ。帰宅部にまで恵んでやる俺って寛大だな! な、そうだろ? それではそれぞれの部員を全員かき集めてグラウンドへ急げ! 詳細は時間内に全員集まれた部活の部員にだけ言う。遅刻は厳禁だぞ? てな訳で後はお前ら次第だ! 健闘を祈る!! あ、ちなみに後五分だから』
『ちょっ!? 何勝手に!』

ブツンッ!

ピンポンパンポン♪

「……何でこんなことになってるのかなぁ」
 僕は正直な感想を漏らした。この学校の副会長はいつもこんな感じでとても困る。
あ、すみません。自己紹介が済んでませんでしたね。
 田辺(たなべ) 正義(まさよし)。これが僕の名前です。
今までの口調から分かるように、名前のようなかっこいいキャラではないです。
名前負けってやつです。
まあ、一言で言うと、普通。

「会長さん……ちゃんと真面目に……やってたのに……」
 関(せき) 遥(はるか)さん。
手にはいつもカバーをかけた本、というより漫画。ツインテールが目印のオタクさん。 
見た目はかわいいんだけど、オタクの事実は変わらない。
北斗の拳からドラえもんまでという広い守備範囲を誇る。
本人曰く、
「オタクも……立派な……日本文化……だよ?」
だそうだ。
僕には到底分りそうにない。

「て言うか山崎、副会長って確か君の従兄じゃなかったっけ? ちょっと黙らせてきてよ」
 宮原(みやはら) 藺鈴(いすず)君。
全体的に白いし細い。
顔は下手をすると女子よりかわいかったり。
なんだけど、少々髪が長すぎて目に入りそうだし、おまけに黒縁眼鏡をかけているため、根暗な雰囲気が漂っている。
まあ、本人はあくまでキャラ作りのためにやっているので止める気は毛頭ないらしい。
先入観から人が近寄らないようにすることが狙いらしい。
性格はまあ分かると思うけれど、さっぱりしていて容赦がない。
一言で言えば辛辣。
不憫キャラによくクルティカル(精神的ダメージでの)になるような発言を容赦なくあびせかけてたり。

「知らねえよ! 俺に振るな! てかぶっちゃけあいつ雪合戦やりてえだけじゃねえか。何やってんだ、ほんと。もう三年だってのに」
山崎(やまざき) 隼人(はやと)君。
耳のピアスに金髪がいかにも不良らしいんだけれど、なんせ身長があれだから怒っても全然怖くない。
例えるなら、「強がってる小学生(低学年)」。
精神的にもこれは当てはまる。
物覚えがとても残念な人だ。

「でも……山崎君も……夏祭りで……はしゃいで……」
「うん、子供相手にいちびられてたよね」
「うっ! 関がせっかくまだ高校生がやっていても不思議じゃないレベルの言葉に変換してくれてたのをお前はぁ!! 傷つくんだよ地味に!」
「でもそれは本当なんじゃ……?」
「田辺! お前まで敵に回るつもりか!?」
「まず敵も味方もないと思うんだけど……。なんか校長までグラウンドではしゃいでるよ」
「まじかよ!?」
「そこはスルー。いつもの事でしょ。で、どうするの? 今日は長谷川も平野さんもいないから、参加権もらえないかもしれないけど?」
「そこは俺が掛け合ってみる。部費は多いに越したことはないしな」
「でも……授業……」

「皆さん、行ってきたらどうですか? 先生は教室でワンセグ使って巨人の試合を観戦しときます。先生は断然、阪神派ですが。なんで阪神のストラップつけてる癖に巨人のを観るのかって? それはもちろん、データ収集のためです。誰一人聞いてないなんて事、先生は気にしません。あ、誰かお菓子持ってません? 食べながら観たいので。お金は後で返しますから」
「えっと、注意しないんですか?」
女子の一人が手を挙げて質問した。
えらい! でも、生憎あの浜口先生に正論は通じない。
論理反射を習得してるからだ。
わけがわからない人は無視してもらって結構。人物紹介がないのはめんどくさいからとかじゃないですよ?

「そんなの先生だって昔はやってましたよ。はい、わかったらこっちに投げる! では、影ながら応援しときますから。あ! 
レフト走れっ!」
「先生、それは思いっきり野球の方の応援じゃないですか?」
「田辺、あの人は教師として逸脱してるから。人生においてもいろいろ道を踏み外してそうだし、無視すればいいんじゃない?」
「うん……あの人……ほんと……ダメ人間……だから」
「お黙りなさい。というか観戦の邪魔だから全員出てけ」
「うわぁ、横暴」

そんなこんなで、先生に教室から追い出された僕らは、一応美術部の部員(美術部とは名前だけで活動らしいことはほとんどやってないけど)なので活動費(雑談時のお供のお菓子代や漫画代)のために、雪合戦に参加することになった。
動機不純だけど、部長はこういう行事が好きなので真っ先に走り出していると思う。
多分、この予感は当たってる。

雪合戦に参加するために長い廊下を一気に駆け抜けて階段を降りる。
グラウンドは校舎のすぐ前、昇降口を出てすぐのところにある。
幸い僕らは二年一組。
教室のすぐ隣に一階へと続く階段があったのでかなり近い。
この調子なら一分以内に着くだろう。

グラウンドに着くと、もう殆どの部が揃っていた。
やっぱり皆少しでも部費が欲しいんだろうな。
真面目だし。たくさんの人の中に、部長の姿ももちろん見受けられた。
橘(たちばな) 葵(あおい)さん。
美術部の部長で三年生。
髪を赤っぽく染めていて、なぜかいつも男子の制服を着てくる関西弁の人。
ほんとに見た目が男の子に見えるので、時々勘違いして告白してくる女子がいるとかいないとか。
本人は、
「一見男の子に見えるけど、ちょっとボーイッシュなれっきとした女の子」
だと言い張っている。
前髪をあげていて、おでこが見えている。
後輩いじりが楽しみという。
これがいつもの部長だ。

グラウンドを見渡してみる。
グラウンドなのに何故か所々木が植えられていたり背の高い草が生えていたり、もはやこれでは運動なんて無理なのでは? と思わせる。
実際PTAから苦情が殺到したりいろいろなところから叩かれたため、体育の授業は全て体育館で行われいるという有様だ。
野球でさえも室内で実施されるので、ガラスが割れることなどもう日常茶飯事だ。
校長もその出費に頭を抱えているらしいが、グラウンドを直せばいいだけのことなのになぜ気付かないんだろう。
そんなグラウンドも、昨夜から降り続いていた雪の白で覆われていた。
案外一色に染まってしまうと少規模な山の中みたいに見える。
ああ、そうだ。きれいだけど、見とれてる場合じゃなかった。
作品名:雪合戦 作家名:常盤