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大きなシオン  ~ こども時代~

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寝る時、シオンがくれた本読んでいた。「母~見て、見て!竜が本読んでるよ~!偉いねぇ。」と俺の部屋覗いたシオンが褒めてくれた。本読むっていい事なんだ。

2月の終わり頃、「付き添い。」だと言われエルグランドに乗って知らない町に来た。
旅館の布団はふかふか~!布団ひっぱって押入れの下に寝てみた。
「竜、嬉しそうだねえ~。こっちは地獄だって言うのに・・・。」珍しくシオンが静かだ。難しそうな本読んでいる。
 次の日、シオンをなんとか大学とかに送った。
お昼食べてから迎えに行った。青白い顔してシオンが出てきた。
「駄目だあ~!絶対落ちる~!ここ落ちたらどうしよう~!」頭かきむしっている。
 シオンの携帯が鳴った。
なんか話して、シオンの顔の色が変わった。
「やった~!これで卒業しても行く所のない人にならないですむんだ~!嬉しいよ~。」
・・・シオンの泣き顔なんて初めて見た。
東京の大学合格したんだって。でも「すべりどめ」なんだって。

「食べたことのないようなステーキ食べさせてあげる。」母が旅館の人に道聞いている。

夜、凄いホテルの前に俺達は立っていた。
「竜、ナイフとフォーク上手く使える?」
「できるかわかんない・・・。」「・・・。」「・・・。」
「高いんでしょ!ここにみんなで入ったら何万円もするんでしょ?止めようよ!これから私にいっぱいお金かかるんだよ!」シオンの言葉で、ホテルから離れた俺たち。
俺は、山小屋みたいなレストランでステーキとハンバーグ両方食べた。
もちろんナイフとフォーク使ったよ!

   ☆ ☆ ☆

「生意気だから、いつかぶっつぶしてやる!」
教室でふざけていたら、智が走ってきた。
「今聞いたんだけど、竜、お前狙われてるって!三年に!」
「何かしたのか?竜?」「三年の男子知ってんの?」
えっ?何の話?三年生?まだ中学入ったばっかりだから誰も知らないよ?
「恐い先輩がいるんだって聞いた事あるよ!三年の4人組なんだって。」
「4人組?じゃあ俺達8人いるから、何とかなるかな?!」
「休み時間は離れないようにしようぜ!」「竜になんかあったら戦う!」
「そうだよ。竜。休み時間は離れるなよ!」仲間が守ってくれると言った。

「いくら自分を守るためとは言っても・・・。」

担任がライターをテーブルの上に置いた。
担任が俺の家にいて、仕事のはずの親が家にいる。

「つぶしてやる!」って言われているんだよ!みんなが噂しているんだよ!
三年だと聞いたけど、俺は相手が誰か、顔も知らないんだよ!
 誰かが、どこかで、俺を狙っているんだよ!俺の恐さがわからないの?!
何か持っていないと、恐くて恐くて、学校なんか行けないよ!
ナイフは危ないから脅しのライター入れてただけだよ!
 急に殴られたらどうするの?誰も居ない所に連れて行かれたら?
みんな部活しているから、仲間はいつも一緒に居られないんだよ!
誰が助けてくれるの?自分しかいないよ!

「こちらでも十分注意致しますので。三年の学年主任とも相談します。
今のところ何もないようですし。
竜之助君、どんな理由があっても、学校には持ってきてはいけないものがあるんだよ。
わかるね?」
  先生が守ってくれるのかな?本当に?

夜、ステーキの町に行ったシオンから電話がきた。
「竜?元気?中学校どう?シオンはちょっとホームシックなんだけど。」
「あ~、うん、まあ~。」
シオンがいれば、やっつけてくれるのに。そう思ったけど、なんにも言えなかった。

「生意気」って何? 俺なんかした?
シオンに言われたとおりに上級生に睨まれないようにしてたよ?
中学入ったばっかりで、何にもわかんないよ。ただ学校に行っているだけだよ?
三年は一年いじめていいの?俺が生意気に見えるってどんな偉い人?
先生って言われる人は普通の大人より頭いいんだよね?勉強だけじゃなくて人間の先生なんだよね?俺より考えが深いんだよね?三年より強いんだよね?
 なんで俺をそんな目で見るの?

髪の毛染めた。制服は切ったり穴開けた。カラースプレーかけた。ペイントした。
指定外履きなんて止めた。赤いTシャツに制服ひっかけて、赤いスニーカーの踵踏んづけて学校に行った。
髪の色は時々変えた。耳に穴開けてピアスした。話するのは同級生だけ。

変な先生が二人いた。
一人は給食時間になると、食堂で俺の隣の椅子に座ってきて、いつも話しかけてくる。
もう一人は、授業中外に出て玄関に腰掛けてボーっとしていると、いつの間にか横に立っている。静かに独り言いってからいなくなる。

 家?学校から帰ってくるとずっと居るよ。
PCでゲームしたり、いろんな人とチャットしたり。
エアコンの無い所嫌いだし、シャワーは毎日しないと気持ち悪い。
 親?
飯食えって言うけど他は別に。俺は「人間不信」なんだって。
時々、学校に呼び出されているらしい。
母親は、たまに勝手に切れて部屋に入ってくる。始めは静かに話しかけてくるんだけど、そのうちに生き方がどうのこうの怒鳴って出て行く。
でも、仕事人間だから。後は放置。
風邪ひくと無理やり病院に連れて行かれるのが迷惑くらいかな?

好きな子ができた。同級生。
その子といるとメチャ楽しい。毎日学校の送り迎えもした。
その子の知ってる三年生の男子とも友達になった。

「日曜ゲーセン行かねえ?」三年の男子に誘われた。
彼女と3人で出かけた。いろんな中学の奴がいた。いつの間にかたくさんの友達ができた。「カラオケにも行こうぜ!」彼女は帰るって言ったけど、俺は久しぶりに外に出たからまだ遊んでいたかった。
近くのバス亭まで彼女を送ってから仲間と合流した。

「この子行くところが無いんだって。今日泊めてもいいかな?」
カラオケに行ったら、化粧したかわいい女の子がいた。
いつの間にか俺の腕を握って離さない。
家までついてきちゃったよ。
「女の子でしょ?こんな夜遅くに!お家の人は?!」
ぶったまげた親は、女の子から電話番号聞いて相手の家に電話したけど誰も出なかった。
 親は別の部屋に布団敷いてくれたけど、夜中になったらいつの間にか俺の布団に入ってきた。

俺は二股とか浮気は嫌いだ。
だから同級生の彼女とは別れた。
今の彼女は高校生だって。大人なんだ。親同士も気が合うみたい。
家が遠いから親が送り迎えしてくれる。
 でも、あんまり中学校に行かなくなった俺に母親はいい顔しなくなった。
だから今日は父親に彼女の家まで送ってもらった。
「竜ー!今日はバーベキューだよ!」彼女のかあちゃん。今日は仕事休みなんだって。
「竜」って俺のこと呼ぶ。いろいろしてくれる。
彼女んちは広い。庭もとっても広い。ばあちゃんとじいちゃんもいる。
携帯にゲーセンで知り合った和也先輩から着信。
急用があるからこれから迎えに来るって。なんだろう?
「行ってくれば?」
彼女がそう言うから、俺は迎えに来た先輩のバイクの後ろに乗った。

「先輩、用事ってなんっすか?」
夜の暗いスーパーの駐車場に他の先輩もいた。
「仲間の儀式があるんだ!」
そう言うと一人が急に俺の顔を殴った。え!?なに!?
殴られた。蹴られた。立てないでいると引きずられた。