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オレたちのバレンタインデー

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3 考える人―オレ


 許せK子。お前の丹精込めたチョコレートであってもオレの命には代えられない、そうだろう? 思えばオレにチョコを渡すほどの勇気のある女はお前だけだった。この辛い時期が終わったら、お前と付き合ってやってもいい。
 さて、これでとりあえずは安泰だろう。しかし、K子がオレを慕う女子全員に伝言を伝えられるとも思えない。これからもしばらくは気が抜けないな……。

「O、昨日例の件はなんとか片付いたぞ」
「よかったな」
 安心のためか寝過ぎて遅刻した。一時間目の授業中に耳打ちすると、Oは神速で教師の述べていることをノートに写しながら、相変わらず無表情に言った。
 …………。Oの反応はいつも淡泊だと分かってはいるものの、親友の喜びは一緒に分かち合って欲しいものである。
「ところで、お前は大丈夫なのか?」
 オレには敵わないが、Oもなかなかのモテ男だ、なんらかの対策を打たないと生徒会室のオセロが待っているだろう。
「いや、僕は……」
「何っ、まだなのかっ」
 なんということだ! ここは、オレが助けないで誰が助けるだろうか。
「オレとお前とは義兄弟の契りを結んだ仲だ。是非とも手助けしようではないか」
「いつ、僕が君と義兄弟になったんだ」
 Oが呟いた。覚えていないのか……! 憤慨し、返答しようとしたその時、教師からチョークが飛んできた。オレとOはそれを巧みに避け、話は次の休み時間に流すことになった。
「それで、お前はこの先どうするつもりなんだ」
 チャイムと同時に聞いた。
「……君は話をすること自体が僕たちに危機を招いていると分からないのか」
 先程の授業で出されたくそ難しい宿題を物凄いシャープペンさばきで処理しながらOは答える。心なしか表情が強張っているようだ。オレは彼の心中を察した。
「そ、そうか。悪かったな、少し事を急いてしまった」
「分かってくれればそれでいい」
 Oはノートを閉じて、ため息混じりに頷いた。
「僕は君の助けなしでもやってゆける。申し出には感謝するが、これ以上僕に関わらないでくれ」
 立ち上がって、教室を出ていった。――副会長め、許せん! オレとOの友情をこうもあっさりと断ち切ってしまうとは。
 直接生徒会室に乗り込んで文句を付けてやりたいが、そんなことをしたら飛んで火に入る夏の虫、奴の思うがままにされてしまうのがオチだ。うーむ……。