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オレたちのバレンタインデー

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7 やってきた学ラン軍団―オレ


 O。どこにいるんだ。そういえば、親友なのにオレたちは、高校生になってから一緒に帰ったこともなかった。今更後悔しているぞ。
 夕陽の差し込む西校舎を走る。走るったら走る。あちこちの教室から文化部のやつらが顔を出し、走るオレを驚き見つめている。
 この辺りにはいないようだ。しかし先程靴箱には靴が入っていた。校内にいることは確かなのだ。
 ――もう捕まってしまったのかも知れない。会長とオセロを……そうとしか考えられん!
 こうなったら、乗り込んで助けるしかないだろう。オレの蒔いた種だ。オレが犠牲になってでも、あいつを助けねば。
 そうと決まれば話は早い。オレは立ち止まり、両手をメガホンにして叫んだ。
「オレ、K子にチョコレートもらうんだー!!!」
 一瞬の沈黙。教室から顔を出していた男どもがオレを凝視してあんぐり口を開けた。お前馬鹿か、という目だ。
 空気がざわめいたかと思うと、廊下の向こうから学ラン軍団がやってくる。先頭の、いかにも不細工な五人組は肩をいからせ、物凄い形相だ。後に続く学ランどもも金髪やらタバコをふかしているのやら不良ばかり。
 五人組の一人、リーダー格らしき男が言った。
「おい、そこのお前。今、聞き捨てならないことを言ったな」
 オレは踏ん反り返った。
「ああ、言ったぜ。K子からチョコレートもらう、ってな」
 瞬間、男の頭からごおっと湯気が昇った。
「ゆゆゆゆゆ、許せ〜ん!!」
 不細工な顔が更に歪む。
「てめえら、制裁じゃ!!」
 男どもが「おぉう!」と唸った。飛び掛かってくる!
 ……と思いきや、後ろの不良どもが、スラックスのポケットから一斉にメモ帳を出した。
「お前、名前は!」
 五人組が叫ぶ。オレは拍子抜けして、がくっと膝を折った。
「え、あ、オレは……」
 まるでオレが負けたみたいじゃないか。気に入らない。
「こ、う、い、う、者だ!」
 生徒手帳を高く差し上げ(ふっ、こんなときのために生徒手帳はあるのだ)、刑事風に言ってみた。しかし期待した反応は得られず、
「貸せ。
 おい者ども、言うぞ、こいつは一年の……」
 呆気なく不良どもにクラスと名前をメモられた。
「――よし。撤収!」
 不良どもがメモ帳を学ランにしまうやいなや、リーダーは命じた。
 ……あれ……? おい、ちょっと待……
 学ラン軍団が廊下の奥に消えていく。