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『アフターケア』episode 01

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(1)便利屋


街の中心部より東へ車で10分程走ったところに、ロシア船舶などがよく停泊している漁港がある。

そこの、漁業組合の事務所3階に、ある男がまがりしていた。
周囲では、その男のことを(河童の翔)と呼んでいた。
何故そう呼ばれるようになったのか理由を聞いてみる。
すると、その男は夏がダメらしい。
夏バテだと言っては仕事をせずにダラダラしているそうだ。
けれど、夏が苦手と言っても食料だけはしっかりと買い出しに行くという。
出掛ける際は決まって特注品の日傘をさすらしいのだ。
そこから、夏場に頭隠して河童のようだ。
と噂が広がり(河童の翔)と名付けられたという。

河童の翔こと久瀬翔(くぜしょう)は、なんでも江戸時代より続く「便利屋」
の主人らしいが、
なんせ夏場働かないものだから、市内中心部にあった代々続いた店を追い出された。

それでも、なんとか知り合いのツテでこの漁業組合の事務所3階にまがりすることになったのだが、今の所、働いている様子はまったくない。
なんせ夏真っ盛りだから。
しかしながら(働かざる者喰うべからず)と言ったことわざからして、
仕事をしないと喰っていけない。
昼働けない彼は、ロシア船舶が停泊した時期だけ、夜になるとそのロシア船に行き、
荷物の積み降ろし作業などを手伝い、身銭を稼いでいるようだ。
それによく私も借り出された・・・


私?私の名前は千里、自他共に認める、か弱き美少女なのだ。

何?
美少女と自分から言うのは可笑しいと?
何を言うか、こ、こ、これは、ちゃんとまわりも認めているのだ。
得に、漁協の(おっちゃん)らは何時も可愛いと言ってくれるのだから、間違いない。
話しを続けるぞ。


それを無視して、男臭い重労働など出来るはずがない。
だから、手伝いはもっぱらフォークリフトでツィーとこなしてしまう使える女なのだ。

これで解ったか。
ちくしょ・・・
私は使える女で美少女なんだ・・・
う~。

前フリ終わり。
次、次、進めろ!!

・・・・・

・・・助監、前原バ~カ。
もう二度と前フリなんかやってやるもんか!!バ~カ。

・・・・・

あ~あっ、千里ちゃん怒らしちゃって知らないよ。
本当にあの子は此処じゃあ人気者なのだから。
20歳そこそこだけどよく働くし、
漁協の漁師連中には確かにマスコット的人気者なのだから、
此処の漁師敵に回したら帰れないよ。
前原さん・・・

・・・・・


では、ここからはわたくし漁業組合組合長の田渕がナレーションを勤めさせていただきます。

ええ、先程までナレーションをして下さいました、久瀬千里(くぜちさと)ちゃんはですね。
河童の翔の遠い親戚なのですが、身寄りがないために翔が親代わりとして引き取って養っております。

「便利屋」の仕事がある時は千里ちゃんが助手として手伝います。
ハイ。

・・・・・

えっ、ハイはいらない。はあ、解りました。

それでは、改めまして「便利屋」とは、読んで字のごとく、何でも仕事をやる。
それが仕事。例え、便所掃除だろうが、ゴミ屋敷の片付けだろうが、
依頼があれば何でもこなすのがモットーです。

あそこでボーとしている男が便利屋の店主翔ですが、見ていただくとお解りの通り。
男のくせに日傘をさして、のんべんだらりと生きているのが現状なのです。
私は悲しい。


ガッゴガァ

ちょっと田淵のおっちゃん。
のんべんだらりとはひどい言い方だな。
それにね、この日傘は政五郎さんが丹精込めて俺に作ってくれた物なんだから。

グゴッガガッ

しっ、翔。マイクを取るな。私が話しているだろが勝手に入ってくるんじゃない。
す、スタッフの皆さんも困ってらっしゃるだろう。

・・・・・

ったく。このクソ暑いのにギャラくれるってから、暑い中協力して待ってんじゃんか。
だから、早く終わらせてくんない。
こっちはクーラーの効いた部屋に早く戻りたいんだからさ。
田淵のおっちゃん頼むよ。

ハハハッ、たく。すいません皆さん。
それでは、ドキュメンタリー「密着、便利屋の男」ご覧ください。

・・・・・


ふ~、あっ、皆さんお疲れ様でした。

よし、じゃあ、次俺ね。
えっ、何?今日はこれでおしまい。
何で?はっ、便利屋の仕事の時にまた来る。
どういう事?ドキュメンタリーの撮影だから・・・。
じゃあ、ギャラは?全部終わってから~
何だよ。それじゃ、俺の待ち時間は無駄だったの~。


はははっ、働かざる者喰うべからずってこった。
ざまあみろ。河童の翔ちゃん。

・・・・・

くっそぉ~ぜってぇ仕事取ってやる。
それでは、本編スタート。

作品名:『アフターケア』episode 01 作家名:槐妖