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若返りの泉  TWENTY

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8  計算機で機織りを



 大学2年生になると週4回、実験の時間があった。昼1時から4時までが指定された時間でも、5時・6時に終わることもあった。
 物理基礎実験では、いくつもある大きな実験机の中に、それぞれのテーマで使う道具が収納してあった。与えられたテーマ毎に机を移動して、その道具を組み立て、データを取りながら考察し、レポートを仕上げていくのである。終われば解体しておく。

 ある日、机の中に使われた形跡のない機械を見つけた。先生に
「これなんですか?」
とたずねると、
「こんな古いもんがあったんですか。計算機みたいですね。使い方は分かりませんわ」 
 先生に了解を得て、その日の実験を終えてからいじくりまわし、ようやく使い方を見いだした。掛け算・割り算なら短時間でできることが分かって以降、みんなそれを使いだした。
 卓上計算機が普及し始めたころである。

 夏休み、バスケットクラブの練習が終わって、Iが所属するクラブの部屋で休憩していた。4年生の先輩やIとおしゃべりしている中で大学祭の話が出て、なにか面白いことをやりたいね、とアイディアを出しているうち
「劇をしよう!」
と、どちらかが言い出した。
 
 お題は「夕鶴」(木下順二作)
 クラスの半数が参加を表明。全員が顔をそろえることはなかったが、集まれる時に来られる人だけで練習を進め、小道具なども作っていった。
 みんな、実験が忙しいのだ。

 効果音を担当した私は、機織り機の音に、あの計算機を使うことを思いついた。
「カタン、カタン、カタン・・・・・・」

 当日、研究室の先生方や先輩たちがたくさん見に来られた。
 好評を得て、気を良くした私たちは、翌年も劇をした。

「赤い陣羽織」(木下順二作)
 主演を演じた。