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若返りの泉  TWENTY

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18  落 ち た !



「きゃあぁぁ〜〜〜」
という絶叫を残して落ちていく女性。映画『クリフハンガー』で、絶壁にいる女性をヘリコプターで救助中、安全ベルトがほどけて落下していく場面である。
 映画などでは、人が落ちる時長々と叫び声をあげているが、実際は声など出せない、というのが通説である。周りの人が叫ぶことはあるが。

 岩の割れ目をレイバック(割れ目の岩に両手をかけて、すぐ横の平らな面に靴底を押しつけて登る方法)で攀じ登っている時、足を滑らせて両手が岩から離れ、落ちたことがある。ランニングビレーを取っていたから、5メートルの高さを落ちて足が地面に達する寸前にパートナーに止めてもらい、怪我をすることはなかった。
「あっ」という声は発したかもしれない。
 瞬間、なんで? と思い、壁が線状になって流れていく様を見ていた。時々、岩の小さな穴がはっきりと見えたりもした。
 長くかかったように感じられたが、2秒ぐらいらしい。

 もう1回ある。
 10メートルほど攀じ登ったところで、ルートを間違えて横へ横ヘ(トラバースという)と進んだ。ホールドもスタンスも細かい。残されたハーケンにカラビナをかけようと腕を伸ばしても、あとわずか届かない。
 あと1ミリ。思わずかかとを上げてしまった。
 瞬間、振り子となって落ちていった。
 声はなし。カラビナの【カーン】という岩に当たる音が、よく聞こえてきたが。
 振られているので側面の壁が見えてきた。
 頭をぶつけてはいけない!
と、頭を壁と反対側にそらせて・・・足の太ももを思いっきりぶつけた。
 この時も、思考する時間が結構長くあったように感じたが、2・3秒のことであったらしい。

 大した怪我ではなかったが、病院へ行った。
 家に帰ると、小学6年生の息子から説教された。
「いい加減危ないことはやめたら・・どやのん!!」

 息子は慎重すぎる大人に成長した。