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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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家人や使用人が出入りするのが目的であろう裏門が見つかると同時に内側からその門が開かれた。
門の中から一人の男が出てくる。
俊弥はそれが誰であるのかと警戒する表情。
誠司は驚愕で足が止まった。
「誠司、どうした」
俊弥の声は聞こえておらず、相手を見たまま誠司の足は止まったまま。
「匠、さん・・・?」
「誠司さん、お久しぶりです」
そう言う声は確かにさっき正面の門の向こうから聞こえた声と同じもの。
「どうして、あなたが・・・」
「あなたの目的のところに案内します」
誠司の問いには答えずに早足で門の中へと匠が歩いていく。
戸惑いながら誠司と俊弥がついていくという形。

歩きながらふと匠が口を開いた。
「誠司さん、樹のことを覚えていますか?」
問われて誠司が記憶の中から一ノ宮樹を思い起こす。
匠の弟で一ノ宮の次男。
最後にあったのはまだ彼が10歳にも満たないころ。
素直でよくなついてくれていた。
また来る、と約束したけれども商売上の付き合いがなくなってからは一切会っていない。付き合いがなくなっても一言別れを言いに行けばよかったものの忙しさにかまけて約束を違えた。
その罪悪感がないといえば嘘になる。
「樹くんのことなら、よく覚えてますよ」
「それなら、よかった」
そんなことを聞かれる意味を考える余裕もなく道を急ぐ。
裏門からはそう遠くない建物の前で足が止まった。
2階建ての離れ。
「この中に、彼らはいます」
離れの入り口の前で匠が足を止めた。
それから消え入るような声で何かをつぶやいた後に母屋のほうへと歩き去った。

『どうか・・・助けてやってください』
確かに、そう言ったように聞こえた。

「匠さん?」
誠司がそう呼びかける声は聞こえていないのか匠は振り向かない。
「誠司?」
匠を見送る誠司に俊弥が声をかけると離れのほうへと向き直った。
「行こう」
鍵があいている離れのドアを開けて中へ入る。
入ってすぐに右側には階段。
階段の奥は広いスペースとなっているがほとんどが物置として使われている様子。
「上に」
誠司が一言だけ言って上へとあがる後を俊弥がついていく。
上がりきる直前、誠司の足が止まった。
「誠司?」
呼びかけて誠司の視線の先を見る。
丁度2階の部屋から人が出てきたところ。
「敦也くん・・・?」
「鷹島さん、兄貴も・・・」
向こうもこちらの顔を見て驚いたたような表情を見せる。
「ここに入るときに撒いたと思ったんだけどな」
追いかけてきたのはわかってたけど、と苦笑い。
「どうして、敦也くんが・・?」
思いも依らぬ人物にいきあたったと一番驚く顔を見せるのは誠司。
「俺の事情はとりあえずいいとして、鷹島さんは早く中に入ったほうがいいと思うけど」
ドアを指差しながら飄々と言う敦也の言葉に言われずともという顔で頷く。
「空流は中ですか?」
「はい、鍵は掛かってないと思いますよ」
敦也の横を通り過ぎてドアを開けた。その瞬間に声が聞こえた気がした。
確かに、空流の声で『誠司さん』と。

「空流、呼びましたか?」

そういいながらドアを開けた。

目に入ったのは、信じられない光景。

その後、空流に止められるまでに自分が何をしたのかは良く覚えていない。