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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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3 -Itsuki side-

“鷹島のお兄さん”と知り合ってからは、毎日が楽しみで仕方なかった。
次に会えるのはいつだろう、と。
もしも一つだけ願いがかなうのならば、”鷹島のお兄ちゃん”が本物のお兄ちゃんであって欲しい、とそんなことまで考えていた。

それから1年ほどたったころだろうか。
自分はまだ小学校高学年にあがったばかりで何もわからなかったけれども家がバタバタしていた時期があった。
両親も兄も常にイライラしていたのは子どもごころながらになんとなく感じ取っていた。

今から考えればあの時が鷹島との付き合いが終ったときなんだろうと思う。
後から親戚の噂話かなんかで聴いた話だとおもうけれど、そうとう家が苦しくなったのだと言うことをきいた。

そしてこのときから、常に両親、特に母親はイライラするようになった。

「樹はどうして一番がとれないのっ!」

クラスでなんかのテストがあって、それの成績を見せたときに言われた言葉。
手を上げられたのはそれが初めてだったと思う。

人が人を叩く音っていうのをはじめて聞いた。
そしてその後に来るじんわりとした痛み。
そのショックに耐え切れなくて、泣き出した。

「どうして泣くのっ!?悪いことをしたのは樹でしょう!?」
そしてその後に次々と飛んできた居間の小物。
居間はどんどん荒れていく。
物が当たる痛みに耐え切れなくて、部屋を出て行った。

母親がイライラしているときに何か意に沿わないことをしていると痛い思いをする、そんな単純なことを学習してからはだいぶ身体の傷は減ったと思う。
まもなく、父親から母親へも同じようなことが行われていたことに気がつく。
身体の傷は減ったけれども、心の傷は減るどころか余計に深まった。

自分を守るために必要だったのは親と距離をとる、という方法。

もう少し歳をとってからは親の言うとおりになんてしないという選択をするようになった。
それが母親をイライラさせることはわかっていたし、やることに意味があるのかと聞かれればそれは別にたいした意味をもたなかったと思う。
単純に反抗期というやつだったのかもしれない。
高校は親が希望した私立なんかに行かなかったし、大学は経済学部に入るという一ノ宮の伝統を突き崩して医大へと進学した。

そしてこの時から、母屋に住むのをやめて離れへと住まいを変えた。

食事も一切家族と一緒にとるのをやめた。

学費を出してもらうことが悔しかった。
早く家を出たくてたまらなかった。


思えば鷹島がすべてのきっかけ。
あの人が裏切りさえしなければ、こんなことにはならなかった。
平和な家庭のまま一生をすごしていた。
心の傷も、身体の傷を負わないままに。

ずっとそう思ってきたけれど、そんな思いも薄まるころ、気づけば大学生活の半分は過ぎていた。
今は3年、卒業まであと3年。
今まで耐えてきた分だけ耐えれば、もう自由になれる。

そんな矢先だった。

『鷹島から子どもを取り返せ』

そんな命令を受けた。
都合のいいときだけ使おうなんてたまるものかと思っていたけれども、協力したのは兄貴と一緒に、という条件だったから。

結局自分は「兄と一緒に」ということに捕らわれたままだったのかもしれない。
もっと一緒に話をしたかった。
もっと一緒に色んなことをしたかった。

でも、もうそれは過去のこと。


Before third Story FIN