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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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君ト描ク青空ナ未来 --完結--

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「というわけなので、明日はでかけてきます」
家に帰って誠司に今日あったことを報告していた。
風呂も使い終わって、二人で誠司のベッドに横になっている。
「いい友達ができたみたいでよかったですね」
「はい。中学校のときの友だちにまた会えたのも嬉しかったし」
その言葉をきいて誠司は安心する。
空流の話をきいていると、中学校のときはあまり友人関係がうまくいってたとは言い難いような印象を受けたから、そのときの友だちと再開したときいたときはちょっと肝が冷えた。
「明日は私も仕事で遅くなります」
「わかりました。夕飯も食べてくるんですか?」
「ええ。なので時間はきにせずに行ってらっしゃい」
空流の髪を撫でて、髪にキスをしながら囁いた。
「明日は出かけるのなら、今日はちょっとだけ」
「・・・はい」
空流が恥ずかしそうに誠司の寝巻きを握ってキスを受けた。



翌朝、ちょっとだけ寝坊をして二人で慌てて家を出たけれど、空流が待ち合わせ場所についたのはまだ時間の10分前だった。
「あ、空流」
「圭介、お待たせ」
すでに圭介は門の前で待っていてくれた。
「早かったね」
「圭介こそ」
「僕は今きたばっかりだからさ」
圭介が指差す先にはバスが走っていく。
「あれに乗ってきたんだ。家へ向かうバス停はこっち」
門から少し歩いて大通りに出たところのバス停に行くと、バスが丁度きたところだった。
空いているバスのなかで外を見ていると駅から離れるにつれて緑が多くなっていく。
「こんな田舎で恥ずかしいんだけどね」
「そんな。ぜんぜん田舎じゃないよ。緑がある住宅街っていいなって思うし」
昔住んでたところなんて、緑の生える余裕もなく住宅が敷き詰まってた感じだしなあ。
20分弱くらいバスにのったところで降りる。
降りたところは団地だった。
「こっち」
似たような建物の中の道をすいすいと圭介が歩いていく。
横長のたてものに5つくらい入り口がついていて、一番奥のところへ入り、階段を上った。
1階上るごとに左右にドアがついてる。
「あ・・・当たり前みたいに連れてきちゃったけど、珍しいよね、こんなとこ」
今更だけど、とちょっと恥ずかしそうに圭介が頭を掻く。
「ううん、うちも昔アパートだったから。近くの団地に住んでる子とも遊んだことあったし」
それをいうと、圭介は安心してくれたみたいだった。
「それならよかった。清藍っていい学校だとは思うけど、お金持ちの子が多くて、とても団地に住んでるなんて言い出せる雰囲気じゃないからさ・・。でも空流にはうっかり油断していきなりつれてきちゃったよ」
「きっと圭介が僕の庶民オーラを感じ取ったんだよ」
「じゃあ庶民仲間ってことで」
圭介がそういったところで、4階まで階段を上った。
「ここ」
鍵を出して、ドアを開ける。
「誰もいないから入って」
「うん、お邪魔します」
靴をそろえて、中に入る。建物自体はけっこう古そうだけど、ものがきちんと片付けられてて家具も綺麗につかわれてたから、建物の古さなんて家の中にいるぶんには全然感じなかった。
「狭いけど、いちおう自分の部屋もあるんだよ」
奥のほうへ歩いていくときれいな緑色のカーペットが敷かれた部屋が見えた。
「ここが僕の部屋。座卓で悪いんだけど、適当に道具とか出してちょっと待ってて」
「うん」
中に入って、座卓の前に座る。本棚とか勉強机とか、制服がかけてあったりとか、綺麗に片付けられていた。でも圭介の性格を現すように勉強机の上だけは教科書やプリントでごちゃごちゃしている。
もともと和室だったのに上からカーペットを敷いているのか、クローゼットがあるべき場所には押入れがあった。部屋の雰囲気と不釣合いでちょっと笑ってしまう。夜はたぶん布団を敷いて寝ているのだろう。
部屋を眺めるのはそれくらいにしておいて、用意されていた座卓の上に数学のセットを出した。
「お待たせ。お茶くらいしかないけど」
座卓の上に冷たいお茶のはいったグラスが置かれる。
「ありがと」
「いーえ」
圭介もごぞごそと勉強机の上からものを取り出して空流の前に並べた。
「これが、夏休みの宿題プリント。こっちは配られてる答えなんだけど・・・」
と見せられた紙には、本当に答えしかかいてなかった、解き方とか途中式とか一切なし。
「こんなんじゃ、いくらなんでも無理だよね」
苦笑いでそういう圭介に空流もコクコクと頷く。
「一応、これは僕が提出した宿題。答えは合ってたんだけど解き方が本当にこれで正しいのかどうかは自信ないから、もし間違ってたらごめん」
「答えあってたって・・・圭介って本当にすごいんだね・・・」
それはこの1週間でわかってたつもりだったけど・・・そんな認識じゃあまだまだ甘かったようだ。
「テストってどんな問題がでるのかな?」
「うーん、宿題テストならたぶん数字がちょっと変えてあるだけの同じ問題だよ。全くおんなじのもあると思うけど。だからとりあえず、解答方法の丸暗記がおすすめかな」
そういいながら自分のノートを指差す圭介に頭の上がらない思いのする空流だった。
「じゃあ、ごめん。遠慮なく写させてもらうね」
「うん。どうぞ。ほんとなら勉強机かしてあげたいんだけど、あそこだけは片付けられなくってさ」
そんなことまで言ってくれる圭介に本当に頭が上がらないと思いながらノートに解答方法を写し始めた。