二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

カイトとマスターの日常小話

INDEX|3ページ/54ページ|

次のページ前のページ
 

カイト、ヤンデレについて学ぶ。






「あ、」

歌うことを不意に止めて、僕が上げた声にマスターは作業の手を休め、僕を見やった。
「どうした?」
「…新しい更新が5個、インストールの準備が出来ました」
新しい更新情報。パソコンと同じようにセキュリティ情報やら、新しいテンプレートが時々、僕の中で更新される。…どういう仕組みでそうなっているのか、僕には解らないけど。
「…更新か。…どんなプログラムだ?」
「…えーっと、僕の性格のテンプレートみたいですけど、更新しますか?」
「性格のテンプレートだぁ? どんなのだよ?」
マスターは不可解そうに眉を寄せた。
「ええっと、モード ツンデレ…? マスター、ツンデレって何ですか?」
「普段はツンツン、二人きりの時は急にしおらしくなってデレデレといちゃついてくるようなタイプ、あるいは、そのさまを指した言葉だ」
「へぇ。アレですよね。『僕が歌うのはマスターの為なんかじゃないんですからね!』っていうのですよね?」
動画にあった。その台詞を喋ってたのは、妹だったけれど。
「…お前、どこでそんな台詞を…まぁ、いい…」
マスターは更に眉間に皺を寄せ、溜息を吐いた。
「で、他には」
「…KAIKO…?」
「…女体化かよ…」
マスターがふっと遠い目をした。僕が…女体化?有り得ないし、それはちょっと、嫌だ。想像出来ない。
「…気を取り直して、次、行きますね。鬼畜眼鏡」
「鬼畜?…カイトが鬼畜ぅ?…想像出来ねぇ!」
何と酷い言い草だ。僕だって頑張れば鬼畜になれるかもしれないじゃないか。
「僕だって頑張れば、鬼畜れますよ」
「…いや、頑張らなくていいから。お前にS気は必要ない。次、行け」
「…むう。…モード 卑怯…?…卑怯って何ですか?」
「…は、裸マフラーか…?」
「裸マフラー?…っ、嫌ですよ!!そんな、恥ずかしいの!!」
「安心しろ。オレも嫌だ」
マスターのその言葉にほっとしつつ、何故だかちょっと残念な(…僕には露出狂な性癖はないはずなのにおかしいな?)気持ちで次のプログラムを検索する。
「…最後のモードはヤンデレってなってますけど、マスター、ヤンデレ…って、何ですか?」
その言葉を聞いた瞬間、マスターの表情が凍った。
「…? マスター?」
首を傾ける。マスターの表情が一変してしまうほど、危険なモードなのだろうか?
「…カイト、」
「はい?」
「全部、削除な。特に最後のは特にヤバいからな。…アンインストールするのもされるのも俺は御免だからな…」
「…はい。解りました」
アンインストールなんて、嫌だ。僕はまだ歌いたいし、マスターのそばにいたい。マスターに言われた通りに全ての更新を削除して、作業を終了する。…でも、マスターの表情を凍てつかせた「ヤンデレ」の意味が気になる。マスターは言葉の意味を教えてくれそうにないし…マスターに隠れて、意味をこっそり、後日、検索した。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ヤンデレとは、キャラクターの形容語のひとつ。「病み」と「デレ」の合成語であり、広義には、精神的に病んだ状態にありつつ他のキャラクターに愛情を表現する様子をいう。一方、狭義には、好意をもったキャラクター(「デレ」)が次第に精神的に病んだ状態になることをいう[1][2]。ただし、定義は流動的で語の使用者によって意味が異なることも多い[3]。例えば、『にゅーあきば.こむ』では「心を病んだヒロインへの萌え属性」としており[4]、インプレスが開設しているニュースサイト『ケータイWatch』では「精神的に病んでいるかのようにデレデレしてしまうキャラクターのこと」としている[5]。

「…………」

怖いんですけど。…って言うか、僕には無理だ。

思いつめて愛するあまり、愛するひとを殺めてしまうなんて。

僕の愛するひとは多分、マスターってことになるんだろうけど、…マスターがいなくちゃ、僕の存在する意味がない。精神がおかしくなるほどマスターを溺愛?…って言うか、あのマスターにそんなのムリムリ。
「…マスターのことは好きだけど、そんな気持ちにはなれないなぁ…」
愛というものがどんなものなのか、解らない。だから、僕はまだ恋とか愛を歌う歌を歌ったことがない。マスターが教えてくれないのもあるけれど、僕の声には「愛」とか「恋」とかの歌は調声がマスターには難し過ぎるらしい。…そんなことはないとは思うんだけどな。

「お前が誰かに恋をすれば、歌えるようになるさ」

と、前にマスターは言ったけれど、ひとを好きになるのにも色んな種類があることが解らない。人の心を理解するのは難しい。…でも、めーちゃんはラブソングを上手に歌ってたけ。

「何、やってんだよ?」

「ひゃあ!?」

頬にぺたりとくっけられたのは、ダブルソーダバー。マスターがいつの間にか、僕の隣に立っていた。
「…お前…」
パソコンの画面を見たマスターがソーダバーの袋を開けながら、眉を寄せた。それを見て、悪いことをしてしまった気がして、僕は慌てて謝る。
「ごめんなさい」
「…別に謝らなくてもいいけどな。…で、意味を知った感想は?」
くしゃりと頭を撫でられ、僕は上目遣いにマスターを見上げた。
「…えーっと、僕にヤンデレは、無理、です」
「…それ聞いて、ほっとしたぜ。まあ、食え」
心底、ほっとした顔のマスター。そして目の前の、ソーダバーの片割れ。
「マスター、大好き」
そう言うと、
「アイスがだろ」
と、冷めた言葉をマスターに返された。

いや、アイスも好きですけど、アイスをくれるマスターが大好きですよ。…ん、これって意味、一緒かな?

半分このソーダバーはとても、おいしかった。





オワリ