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朱璃・翆

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affection



「次っ。」

翆が皆の訓練の相手をしている。
棍を自在に操り、凛と立っているその姿は、男も女も惚れ惚れする。

今日も訓練があると分かってその様子を人目見ようと、女共(なかには男も混じっているが・・・)が押しかけて見学している。
きゃあきゃあ騒ぐと、翆に身も凍るような視線で睨まれる為、皆大人しく見学しているが、目は翆に釘付けである。

かという俺も見物の口だ。先程まで自室で仕事をしていたが、早々に終わらせて翆の姿を拝もうとやってきた。

いいね、やっぱり。

今のところ翆とは手合わせをしていない。やりたいと思っているのだがなかなかタイミングが合わないのと、シュウに見物客が押しかけるから止めてくれとお願いされている為、保留中だ。
でも練習とはいえ戦っている翆の姿は見甲斐がある。

「次っ。」

さすが元貴族。
立ち振る舞いが美しい。俺とはエライ違いだな。
俺のは・・・なんだ、狩り、か?
やるかやられるかって環境だったしな・・・。それと姿勢がいいからか、スタイルも女顔負け、だな。

うん、いいね。

動き一つ一つにムダもないし、なんだか色気もあるよな?
・・・色気といえば、イクときの表情も最高だったよな・・・?あれだけで抑えるのは辛いものがあった。
気を失ってくれて良かった。でないとそのまますべていただいてしまうところだった。

まだだよな・・・?

そろそろかなとも思うけど、翆が俺に馴染んでくれてから・・・。
有無を言わさずやっちゃわないでゆっくり進めてやってるんだからな、これでも?
・・・それに、空腹は最高のスパイスっていうしな。
我慢の末の翆は、最高のご馳走だろう・・・。

「朱璃様?なんだかとてもご機嫌のようですね?」

カミューが俺を見てニッコリと言った。俺もニッコリして言った。

「うん、まあね?やっぱり強い人の動きを見るのは楽しいですし。」

本当は獲物を見るように見ていたんだけどね?

「そうですね、翆様はやはりお強い。朱璃様も相当お強いですけどね。」
「えー?そう?僕も強いって思いますぅ?うれしいな、ありがとうカミュー。」

俺は天使のような笑顔でカミューに礼を言った。
カミューはそれこそ可愛いウサギを愛でる狼のように俺に微笑んだ。

この騎士様は、女性に対しての扱いが紳士的な美青年の為とても女共に人気がある。
でも俺は知ってる。
こいつは女に対して欲がないから紳士なだけであって、俺とかの可愛い少年を見る目はそうとう熱がある。
分からないようにはしているが。
ふふ、別にかまわないが、残念だけど俺は相手にはならないよ?
マイクロトフで我慢しておきな?うぶなマイクロトフでな。あいつもまじめな美青年で女共に人気がある。人気者同士、お似合いだよ?

俺はまたニッコリした。

まるで見詰め合っているかのような俺達の間に棍が飛んできた。
さっと避ける。

「すまない、手が、汗で滑った。」

翆がすまなそうに棍を取りに来た。
カミューがはい、と翆に渡してやる。
翆はどうも、と棍を受け取った。

・・・汗で、ね・・・?

「翆さあん。そろそろ、休憩、しません?僕、お茶用意してきてるんでェ。」

俺はニッコリとそう言い、翆の手をつかんで握った。
そして皆が見守る中、外の綺麗な池の木陰に連れ出した。

「ここで、休憩、しましょう?お茶とね、レモンタルトを用意してるんですよ?酸っぱいもので疲れを取って下さいねえ?」

そう言って翆を座らせ、菓子とお茶を前に用意してやる。

翆が食べ始め、咀嚼したものを飲み込んだのを見届けてから俺はニヤッとして言った。

「ねえ?あなたの手はすべすべ、さらさらしているよ?どこに汗をかいているんだ?」

翆はぐっと詰まらせる。食べ物を飲み込むのを待ってよかった。

「ふふ、あなたは存外ヤキモチ妬きだね?」
「なっ、ち、違う・・・。」

翆は赤くなって顔を逸らす。
俺は手をのばして翆の頬にあてた。
作品名:朱璃・翆 作家名:かなみ