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大人のための異文童話集1

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そう、今ではただの壊れた鏡の私です。

私を壊してしまった女王が去り、もう捨てられてしまうだけの運命の私。
そんな壊れて投げやられていた私のことを、彼女が見つけてくれたのです。

それは白雪姫が王子のお城へ引っ越しする日のこと。
王子は白雪姫に新しい鏡を買えばいいからと、壊れて汚れた私など捨てるように言ったのでした。

でも白雪姫は…
「ごめんなさい、これだけは捨てられないの。」
「だってこの鏡だけが、私を世界で一番きれいと言ってくれたのですから。」
「いままでも、そして年老いても、きっとこの鏡だけが私のことを…」

そう言って白雪姫は壊れた鏡の私を、このお城へと持って来てくれたのでした。
そしていつまでも、大切にしてくれるはずだと思っていたのです。

しかし白雪姫には…
私の言葉はもう必要ないものになったのでしょう。

若くて素敵な王子がいつも傍にいて、女王としてのお仕事も楽しいもののようだったから。
そしてときは流れ、私はこうしてこの部屋の隅へ置き忘れられてしまったのです。

私は美しき女性を映し出す魔法の鏡。
できるなら以前のように、世界中で一番美しい女性を映し出すように尋ねられたい。

そしたら今でも私は、白雪姫の姿を映し出すことでしょう。

だからお願い、白雪姫。
早く私を毒リンゴの眠りから呼び醒ましておくれ。