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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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大魔王ハルカ(旧)

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第6話_魔王復活


 魔法大国アステアは今、一人の少女の身体を持った大魔王によって滅亡の危機にさらされていた……。
 突如どこからともなく現れた魔王によって居住区は次々と焼き払われ街は死に業火に包まれ、人々は魔王の脅威に慌てふためき恐怖した。

 アステア王国ヴァルハラ宮殿――今ここでは国の要人たちが集められ緊急会議が行われている真っ最中だった。
「君たちをここに集めたのは他でもない、この国は今魔王ハルカと呼ばれる者によって滅亡の危機にさらされている」
 こう言ったのは現国王のクラウスだ。
 彼は8歳という異例の早さで国王の座に付き、その才を活かしこの国を5年という短い時間の間に世界にその名を轟かす魔法大国とした若き王であった。
 クラウスの声は重い……魔王の襲撃、彼は国王就任以来の最大の危機にさらされていた。
「すでに我が国の魔法兵団を戦場に投入したが……すでに全滅してしまったと聞いている……」
 王の言葉にこの席に集められた者たちが一斉にざわめき始めた。
「まさか……世界に無敵と言わしめた魔法兵団が……」
「国王様、私たちはどうしたら?」
 国王の表情は尚も重い。
「隣国に応援を頼んだが、応援が到着するのは早くても3日後になるだろう……だがその時にはこの国は……」
 ……国王の言わんとすることが皆わかり、一同は沈黙した。
 もうすでにこの国の最大の戦力は失われ、国の中枢、このヴァルハラ宮が落とさせるのも時間の問題だろう。3日など待っている時間はない。
 甲冑の音を大きく響かせながら兵士が会議場に息を切らせながら飛び込んで来た。
「大変です、魔王が宮殿の目の前まで攻め入って来ました!」
 人々はどよめき顔を見合わせた。
「静まれ!」
 王の声で辺りは一瞬にして静まり返った。
「魔導砲の準備をさせろ!!」
 魔導砲とはこの国の魔導士たちが古の文献を調べて現世に復元された魔導兵器で、その攻撃力は最大出力では小さな島を破壊させるほどのもので、その脅威の破壊力から実戦では今まで一度も使われたことはなかった。
 王の意見に国始まって以来の”女性元帥”エルザが反論した。
「しかし、魔導砲は危険過ぎます。どの位の被害が出ると御思いで?」
 ヴェガ将軍はその意見に顎ヒゲを手で触りながらこう言った。
「しかしねぇ、この国の非常事態にそんな些細なことを言っている場合ではないと思うが?(……ククク)」
「些細なことですって!(このゲスが!)」
 エルザ元帥はテーブルを両手でバン! と叩きながら立ち上がり激怒した。
 クラウス王はそんなエルザを見て、
「気を静めたまえエルザ元帥、確かに君の言うことはわからなくもないが我々には他に成す術が無い。君は何もせずに国が滅びるのを見届けろとでも言うのかね?」
「しかし……(国の宝である民の命が……)」
「国王の意見は絶対であるぞエルザ”元帥”(少し黙っていろメス犬は)」
 エルザ元帥とヴェガ将軍の仲の悪さは王宮内では誰もが知っていることで、ヴェガ将軍がエルザ元帥よりも地位が下ということがエルザがヴェガの嫉妬をかう結果となり二人の仲を必要以上に悪くしているとも言われている。
 国王クラウスは静かに淡々と二人に命令を下した。
「エルザ元帥は魔導砲の準備を、ヴェガ将軍は城にいる剣士たちを引き連れ魔王討伐を任せた」
「「仰せの通りに」」
 エルザとヴェガは声を合わせてそう言うと、互いの顔を睨みつけた。
 こうして、ついにアステア王国の存亡を賭けた魔王との戦いが本格的に始まったのだった……。

 突然の爆発音とともに倒壊したルーファス宅を中心として、魔王の襲撃が始まった。
 辺り一帯は瓦礫の山と化しその光景は悲惨なものであった。
 中には生きながらにして瓦礫の下に生き埋めになった人もいるだろう……。救援隊はまだ来ない……だから彼女は自ら地上に出た。
 瓦礫の山が爆発音とともに吹っ飛んだかと思うと、煙の中から女性が姿を現した。
「(……日差しがまぶしい)」
 瓦礫に山の下から見事生還を遂げたのは彼女……カーシャだった。
 カーシャは顔に手をやり空を見上げ瓦礫の山にたたずみ、辺りをくるりと見渡し考え事をした。
「(凄いことになっているな……このまま逃げるという手もあるがそうも言っていられないな。さて、どうするか? ……まずはあれからか?)」
『あれから』とは何のことだろうか? カーシャの考えることは少し理解不能なことがあるので検討もつかない。
 カーシャは何かを探すように地面を見ながら歩き回ると、ふと足を止め、
「この辺り……」
 と呟くと、腰を屈めて瓦礫を持ち上げては投げてという作業を繰り返し、どんどん瓦礫を退かしていった。すると、ベニア板が見えてきた……まさかこれは!?
 カーシャがベニア板を退かすと、そこに居たのは言わずと知れたルーファスであった。
 カーシャはルーファスの姿を確認すると、ルーファスに足蹴り(かかと蹴り)をくらわしながらこう言った。
「起きろルーファス、いつまで気絶している気だ!」
 気絶? ……ルーファスは死んだのでは?
 カーシャは容赦なくルーファスを蹴りまくる、ドゴッ! ドゴッ! とマジ蹴りだ……これは死者に対する冒涜では……なかったらしい。
 ルーファスの死体が行き成り動き出しわめき出した!?
「痛いだろ、そんなに蹴るな! 一発目で起きてるから(まったく、なんでカーシャに蹴られなきゃいけないんだ)」
「だったら早く出て来い!」
 あれっ? ルーファスは生きていたらしい……(笑)。
 ルーファスは首をきょろきょろと動かすと思わずこう叫んだ。
「どこだここ!?」
 ルーファスは気付くと穴の中にいた……そう言いたくなるのもわかる。
 ルーファスは穴の中から這い出すと、辺りの風景がさっぱり、すっきり、ガラ〜ンとしていることに気付いた。
「…………(なんじゃこりゃ〜っ! ……建物が……町が……そんなことより自宅が無い!」
 ルーファスは唖然としていまった……見覚えのある看板や建物が瓦礫と化している。
 ルーファスは辺りを指差し今にも泣きそうな顔をしてカーシャを見つめた。
「何これ?(何があったの?)」
「魔王が”何故か”突然現れてな……こうなった(そんな目で見つめるな……はずかしいだろ)」
「魔王が……!? ハルカは、ハルカはどうした!」
 ルーファスは慌てて辺りを見回した。
「ハルカはここにはいない……ハルカは……ハルカはもう……(……ふふ)」
 カーシャの瞳は涙で濡らされ、地面に泣き崩れた。
「どうしたんだ、ハルカはどうなった?」
 ルーファスはいつに無く真剣な表情でカーシャの肩を掴んだ。
 突然立ち上がったカーシャの瞳には涙一つ無く、口元は笑っていた。
「それがだな、魔王に身体を乗っ取られて大変なことになってしまった、あはは(あれはもう笑うしかないな……ふふ)」
 泣き崩れたのはカーシャちゃんの演出だったらしい。
「あはは、じゃない! 魔王にって、大事だろ!」
「全くだ」
 カーシャの声にはまるで感情がこもってなかった。……誰がこんな事態を引き起こしたんだ! しかし、ルーファスはそれを知らない。
 カーシャはルーファに背を向け突然歩き出しこう言った。