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フレンドボーイ42
フレンドボーイ42
novelistID. 608
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私はお腹を他人に貸しています

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おなかの中で赤ちゃんが動いている。元気だ。
 この子はきっと可愛いだろう。
 というか、赤ちゃんがかわいくないはずがない。
 でも、私は喜べない。
 
 私は、代理母である。

 *

 代理母。他人の受精卵を子宮に入れて、他人の代わりに赤ちゃんを育てる。そして、生まれたらその依頼主に赤ちゃんを渡し、その時にお金を受け取る。代理母には制限が生じ(命を預かるのだから当然である)、また、出産することから本来の妊婦同様の苦痛と、リスク(場合によっては死ぬことすらあるのだ!)が伴う。
 そして、なにより悲しいのが、たとえ自分と血がつながっていなくとも、おなかの赤ちゃんに愛情を感じてしまうことである。

 *

 私の依頼者は別に不妊というわけではなかった。ただ、おそらくは金持ちであったから、出産リスクを避けたいだけであろう。金持ちは貧乏人とは常軌を逸した事を思いつく。
 そして私は依頼され、代理母になることになった。当然、そんなわがままのために自分をリスクに貶めたくはなかったが、私の家庭環境からしてしょうがないのであった。

 私のうちは貧乏である。

 私の両親は私を含め3人の兄弟を養っているが、二人とも共働きであるが生活は苦しい。食べ物すらろくに変えず、次女の学費や三女のおもちゃを買うお金などが明らかに欠乏しているのだ。こういった状況で、しかし私はそんな妹たちの姿など見ていられなかった。私はどうでもいい。妹たちが幸せになれば。しかし、水商売なんていうものは当然だが親が反対する。

 そこで代理母を選択した。

 …しかし。
 日に日に動きづらくなり、とてもじゃないが日常生活など行える体ではなかった。これだけの苦痛に対して、示された高額の報酬も安く感じられた。

 お腹の中で赤ちゃんが動いている。
 「あなたを生む時もこうだったわ」
 母が懐かしんでいた。
 「お腹の中で確かに命が動いている、そのことを知らずに親などつとまるものかしら」

 赤ちゃんが動く。
 本当に私とは血などつながらないというの?
 だって現に私のお腹に入っているじゃない。

 私はついに出産した。
 元気な男の子だった。すぐに依頼者がうけとりに来た。
 高額の金。
 私が代理母を引き受けた時は最もほしいと思っていたもの。
 しかし。