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王立図書館蔵書

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 ひとくくりに魔王といっても過去には様々な魔王がいる。いや、むしろいつの時代も様々な魔王がいたとしたほうが正しいだろうか。

 この章では歴代魔王の中でも特に許されざる罪を犯した、ある魔王の話をしよう。
 
 それは第二百三十一代目の国王が治める世のことだった。国王と王女の間には、それはそれは愛らしく利発な王子がいらっしゃった。その未来の国王たる才能はすばらしく、誰もが幼い王子の姿を目にすれば国の輝かしい将来を期待せずにはいられなかったという。

 しかし我が国の未来を託されるはずだった王子には、とても悲しい運命がもたらされた。とても信じがたいことだが、王子は生を受けて八年目の夜を待つことなく、忽然と姿を消してしまわれたのだ。それも国中のどこよりも警備の厚い、城の中でのことである。

 ふた月の間城中の捜索が行われたが誰一人として王子の姿を見つけることはできず、やがて国中に王子捜索のお触れが出され、数々の勇者の称号を持つ者たちが王子の無事を祈り世界中へと旅立った。ある勇者が王子を見つけたのは、それからまもなくのことだったという。その勇者は長いこと旅に出ていたために王子が行方不明になったことも出されたお触れのこともまったく知らなかったそうだ。

 果たして王子はどこにいらっしゃったのか。どのようにして誰にも知られることなく消えることができたのか。なぜそのような事態が起きたのか。その答えを、国中のいったい誰が予想できただろう。なんと、王子は北のはずれの古城に住む魔王に捕らえられていたのだ!

 そこで王子がどのような生活を強いられていたのかは我々の知るところではない。しかし王子はさぞ傷ついておいでだったのだろう。勇者と共に王子が城へお戻りになられた時、王子は心をなくされておいでだった。
 国中の医者に見せても、王子のお体はいたって健康そのものである。それなのに勇者が発見したときから城へのご帰還後も、王子は一度も笑いもせず、まったく言葉をお話にもならないのだ。その瞳には何も映されることがなかった。

 ひょっとしたら魔王が死の間際にあの卑しい悪魔の力を使って、王子の心を己と共に地獄へ連れて行ってしまったのではなかろうかと、国のそこかしこでは密やかに囁かれた。王子を人質に使うなどということすら思いつかず、ただ奴隷として手元に置いておくことしかしなかった間抜けな魔王には、それが精一杯の人間への復讐だったのかも知れない。

 しかし魔王は我らが王の治める平和と光に満ちた国を滅ぼし損なったかわりに、一人の尊いお方の心を連れ去ってしまったのだ。

【王国史第五八四巻一三章より】
作品名:王立図書館蔵書 作家名:烏水まほ