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寝ずの晩―第2話

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 僕はさらに現状を理解できなくなった。目の前には見知らぬ、でもどこか見覚えのある、そんな女の子。でも親族ではない。いくら忘れっぽい僕でも親族の顔ぐらいは覚えている。まあ名前を言えといわれると難しいけれど。それとさっき女の子が言った「化けて出た」という言葉。どういうことだ?数秒考えて僕はある事を思い出して、愕然とした。昔みたある写真がこの子とそっくりだったのだ。その写真は、その写真の人物は…
「まさか、もしかしてひいばあちゃん!?」
僕の反応がたいそう面白かったのか。女の子はいたずらが成功したときの少女のように笑った。そして、
「そうそう、そういうリアクションが欲しかったんだ。あー、あの世に行く前にここに戻ってきてよかった。」
ひいばあと名乗る女の子は、ひとしきり笑った後僕の疑問に答えた。
 「確かに、わたしはお前のひいばあだ。びっくりしただろ?」

 僕は混乱した頭をフル回転させながら現状理解に全神経を傾けた。幽霊なんてそんなものの存在を信じている人間は、夢の見すぎだと笑っていた。でも、今僕の前にいる女の子は、記憶の中にある、白黒写真でみた若い頃のひいばあそっくりだった。
それに喋り方、笑い方、立ちい振る舞い。どこをとっても自分の知っているひいばあにそっくりだった。これは本当にひいばあと認めるしかないのか。
そんな疑問に答えるようにひいばあは僕に話しかけた。
「三途の川ってわかるよな。私はそれを一回渡っちまったんだ。120まで生きるとか言われてたのに気がついたらあっさりとわたっちまったんだ。まあやりたいことはひとしきりやったから後悔は無いから別に良いか。と思ったんだけれど、気になることがあってな。神様に頼んでちょっとだけ戻らせてもらったんだ。」
「で、でも、なんで、わ、若い…」
「ああ、この姿か、これも神様に頼んだんだよ。お前私が昔はものすごい美人だったっていっても信じなかっただろ?写真じゃわかりづらいし、それじゃあ、せっかくだから若い頃の姿で戻りたい。そういったらあっさりOKが出たんだよ。神様は気さくでいい人だったぞ。」
なんというひいばあらしい理由。若手の芸人並みに怖いもの知らずで後先考えない行動。神様すいません。うちのひいばあは生きてたときもこんな感じでした。だれとでもすぐに仲良くなってしまう性格は死んでもなお健在なようだ。
作品名:寝ずの晩―第2話 作家名:伊織千景