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Gothic Clover #04

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 これは、ついこの前の話だ。

「ナァ罪久」
「ん、何?」
「恵之岸(えのぎし)歌劇団ってなんなんダ?」
「珍しいな、ネジくんからその話題を振ってくるなんて」
「教えてくれないカナ?」
「しゃーねーな」
「サンキュ」
「あのな、人間の中には、人間を殺さずにはいられない狂った奴がいる。それはわかるな?」
「ウン」
「しかし、そういう奴等が好き勝手に他人を狩っていると、社会や世界にもちろん支障が出る。そこで作り出されたのが『恵之岸歌劇団』だ。『恵之岸歌劇団』は世の中の人間を『区別』するんだ。こいつは殺してもいいとか、こいつは殺したらやばいとか。そうすることによって殺人者と被害者を管理し、社会のバランスを保つ。言うなれば殺人者の『ギルド』ってトコかな?」
「『歌劇団』なのにカ?」
「『歌劇団』になった理由は、団員をレベル分けしているからさ。殺人中毒の弱い奴順に1幕、2幕…ってね」
「じゃあ『人喰倶楽部』ハ?」
「あいつらは酷い。あの連中はバランスを考えない。たとえどんなに社会に影響力がある人だとしても、自分の欲するままに殺す」
「でモ、殺したい奴をどんどん殺しているようじゃその『人喰倶楽部』内で内乱が起こってしまうんじゃないカ?」
「もちろん。だから彼等はその集団形態を『倶楽部』にした。同じ思考を持つ者のみが集まり、内部で競いながらもお互いの腕を高める。中には自分の殺人術を極めたくて人喰倶楽部に入った奴もいる程さ。ったく、タチ悪い」
「ボクから見れば50歩100歩だガ」
「いーや、違うね。月と太陽ぐらい違う」
「二つとも星だけどネ」
「足をすくうような事言うなよ」
「悪い悪イ。デ、なんでその二つは対立してるノ?」
「2年ぐらい前かな。うちの団長の一人息子が人喰倶楽部の連中に殺されてさ。」
「どうやっテ?」
「内臓をブチまけられて死んだ」
「……やっぱリ」
「でも、なんでいきなりこんなこと聞いてくんの?」
「いヤ、自分の身を守るための情報は早いうちに聞いておきたくてネ」
「ふーん」

 しかしねぇ…
 恵之岸、か。
 懐かしい名だな。

++++++++++

 これがこの前に罪久から聞いた話。確か格ゲーをしながらの会話だった。
 さしあたって、ボクは今、その「人間を殺さずにはいられない狂った奴」を相手に会話していることになる。
 校舎の外、木の下のベンチに座って。
 生物教室から男を尾行していたのがだが、案外というか、案の定、気付かれてここまで誘導されてしまった。

「これはこれは……」

 そいつは言った。

「かわいい女の子が来たものだ……」
「残念だけド、ボクは男の子でネ」
「おやおや、それは失礼……。不正解でしたか……」
「オット、ポケットから手を出すナ」

 ボクは銃を突き付けた。あの奏葉坂造(かなは さかぞう)の銃を。大丈夫、この辺はあまり人が来ない。

「おやおや……物騒ですね……でも驚きましたよ……。まさかこんな場所にあなたのような人がいるとは……あなた、恵之岸の者ですか、それとも、同胞……?」

 なんだ? こいつら、自分が所属している集団のメンバーを全員把握していないのだろうか?

「……どちらでもナイ」
「もしかして『ソロ』ですか……?」

『ソロ』…単独ってことか。

「ボクはあなた達とは違ウ。人を殺さないと生きられないワケじゃナイ」
「またまた不正解でしたか……。そう見えるのですけどねぇ……」
「何をしにきタ」
「別に……ただ人が集まっていたので来てみただけですが……」
「本当にそれだけカ?」
「解答を疑っちゃいけないよ…」

 いや、疑うだろ普通。

「お前、まさか人を殺す気なのカ?」
「正解です……」

 ボクは銃を頭に押しつけた。

「もしかして、お怒りですか……? 私みたいな人間を知っているでしょう……? 生物が生物を殺すなんて……当然のことですよ……」
「お前がどこで人を殺そうと勝手ダ。ただ、ボクには、ボク達には迷惑をかけないで欲しイ」
「それがあなたの解答ですか……?」
「そうダ。だから早く帰ってくれないカ?」
「その問題についての解答は───」

 そいつは、頭を急に前へ移動させた
 銃口の先からそいつの頭が消える
 そいつはナイフをポケットから取り出す
 ボクは銃をそいつに向けようとする
 そいつがナイフを振るう
 ボクは銃の照準をそいつに向けることを諦めて、ナイフを銃ではじく
 そしてすばやく距離をとる
 1秒程の出来事だった

「その問題についての解答は……『ノー』です。偶然ですが、是非殺したい人間がいましてね……」

 誰のことだろうか?

「そしてあなたの今の行動は正解です……近距離戦では、いちいち銃の照準を合わせて引き金を引くよりも、ナイフや格闘の方が優れている……まぁ、ナイフを出す暇はなかったようですがね…」

 仕込みナイフを見破ってやがる。まぁ、当然か。

「それでは、そろそろ行きますか……」
「させるカ!」

 ボクはそいつに駆け寄るが、その前にそいつは何かを地面に投げ付けた。途端に煙が出る。煙幕か。

「それではさようなら、かわいいナイフ遣いくん……」

 煙の中から声が聞こえる。

「最後に問題なしで解答をあげましょう……私の名前は人喰倶楽部第4席……爆薬遣いの人杭消太(ひとくい しょうた)です……覚えておいて下さいね……」

 そう言い残して、そいつは……消太は消えた。
 煙幕が晴れる。
 クソッ、逃げられた。
 しかし、主に使う凶器がナイフだということまで知られてしまった。こっちはまだ銃しか使っていないハズなのに。
 爆薬遣い、やはり武器は爆弾だろうか?
 厄介なの相手にしちまった。
 さてどうするかな?
 ボクはエプロンのポケットから携帯を取り出す。素早くボタンを押して、ある人物に電話をかける。

「……モシモシ」
『合言葉をどうぞ』
「ハァ……7424wff5g」
『はい、しょーにんっ!はろーネジくん、何の用かな?』

 いちいちパスワードじみた合言葉を言わなきゃいけないのは、安全のためとはいえ、やっぱり疲れるなぁ。

「今すぐ会いたイ。今どこにイル?」
『今、地学教室でプラネタリウム見てる』
「じゃあ見終わったら3階の3‐5の休憩所に来てクレ。大事な話がある」
『大事な話って…もしかして、プロポーズ? やだぁー、どーしよぉー』

 プチッ
 電話を切った。
 さて、行くか。
 ボクは校舎に向かって歩きだす。
 さーて、忙しくなってきやがった。
 だから嫌いなんだよ、学園祭。

++++++++++

「……遅イ」

 三階3‐5の休憩所。お茶が無料で飲める。しかも、そのくせ人はあまりいないという、密談には結構良いスペースだ。だがしかし、罪久が来ない。プラネタリウムの公演は一回15分なのでそろそろ来てもいいハズだ。
 ガラッ
 ドアが開く。

「遅いゾ罪久」
「悪い、遅れた」
「……ウン、そりゃ遅れるヨナ」

 罪久の手いっぱいに食料品が抱えられていた。
 焼きそば、わたあめ、フランクフルト、ポテチ、ポッキーetc…口にはリンゴ飴がくわえられている。
作品名:Gothic Clover #04 作家名:きせる