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Gothic Clover #02

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 ボクは気付いてしまった。
 もう、どうでもよかったのに。
 考えたくなかったのに。
 気付きたくなかったのに。
 でも、ボクは気付いてしまった。

 ボクは目を覚ました。
 時計を見る。
 7:36
 学校に行く仕度をしなければならない。
 さぁ起きよう。
 ボクはベッドから降りた。そしてカーテンを勢いよく開ける。初夏の日差しが窓ガラスを通して差し込んできた。日光を浴びて、ボクの頭は完全に覚醒する。
 さて、始めるとするか。
 ボクの下らない人生を。
 道化は今日も時を貪る。

 一週間は短い。まぁ、他人によって一週間という時間は長かったり短かったりと個人差があったりするだろう。しかし、中間テスト一週間前の高校生という身分のボクにとっては一週間という時間なんてものは一週間と言うよりは一瞬間と言った方がいい程短く感じるモノなのだ。だから、誰がなんと言おうとボクにとってテスト一週間前の一週間は短いのだ!!

「とは言ってもナ……」

 テスト前の一週間がどんなに短くとも、結局ボクは別にテストに備えて勉強するワケでもなくただ時を無駄に過ごすのであった。

「いや、『ボク達は』、カ」
「え? 何?」
「なんでもナイ」

 掻太はサンドイッチを口に咥えながら首をかしげた。こいつの場合、勉強しなくても点数取れるからなぁ。頭がいいとはうらやましいコトである。ボクは学食のラーメン(350円ナリ)を啜った。いつもは屋上で昼食を食べているボク達だが、今の季節はさすがに暑いので人込みを我慢して食堂で食べている。ちなみに今日は人飼は遅刻だ。5限目から来るらしい。(理由は「なんかだるいから。」の一言。)

「そういえばサ、掻太」
「ん?」
「前持ってた週刊誌今アル?」
「んーちょっと待って」

 掻太は鞄に手を入れてごそごそと探り始める。ほどなくして1冊の週刊誌が出てきた。

「おら」
「サンキュ」
「何? 調べモノか?」
「気になるコトがあってネ。」

 ボクはページをパラパラとめくる。
 ……あった。
 それはこの前に掻太が見せてくれた地図だ。ボクは無言でその地図を見つめる。

「……なるほどネ」
「何が?」
「次ノ犯行現場がわかっタ」

 掻太がガバッと立ち上がった。

「どこッ!?」
「ココ」

 ボクは一点を指差した。

「針津岳。ここダヨ」
「…………どうしてわかったんだ?」
「……1体目、現場は山舵市北東部にあたる、比奈野山ダ。」
「? どういうことだ?」
「黙って聞ケ。2体目、現場は山舵市北東部の山舵もみじ公園。」

 ボクは胸ポケットからペンを取り出して比奈野山からもみじ公園まで線を引いた。

「?????」
「3体目、山舵市東南部、双山公園。4体目、山舵市南部、 妻泣山。」

 ボクは線を引く。

「5体目、山舵市南西部 酒刃第1公園。」

 ボクはそこまで線を引いた後、ペンを胸ポケットにしまった。

「さ、わかったカナ?」
「……」

 地図上にはボクが引いた線によって半円弧ができていた。
 山舵市の周りに点在している、森林のある公園を

「じゃあ、この調子でいけば次は西部の針津岳というワケか。」
「ウン」
「でもなんでわざわざこんな風に殺す場所を変えているんだ?」
「確かに。一見、規則性がアル。こんなんじゃ警察にも次の犯行現場は予想されると思うゾ?」

 というか、わざと規則性を持たせているようにしか思えない。ま、犯人にとってはそれも意図的なものなのだろう。

「よっしゃ、じゃあさっそく現場行こうぜ!」
「今かラ!? つーか行ってどうするノ?」
「現場の張り込みをする俺達 犯人を捕まえる俺達 新聞に載る俺達 英雄になる俺達。もうこの時期の話題は俺達が主役だぜ?」
「そこまで妄想できるオマエの才能だけはすごいと思うヨ」

 まったく、目立つことが好きな奴である。

「さぁ行くぜ捩斬。金一封は夢じゃねぇぞ」
「……つまらなイ。いい加減にシロ」

 ボクはラーメンのスープをようやく飲み干した。

「とにかく現場の張り込みなんてする必要はナイ」
「何故に?」
「ボクは屍体が見れれば充分なんダ。犯人がどうしようとどうなろうと知ったコトじゃナイ」
「でもさー……」
「ボク達には、関係ないダロ? ボク達はただ『犯人に会いたい』のであって『犯人を捕まえたい』ワケじゃないんだからナ」
「……ちぇー、わかったよ」
「わかればヨシ」

 その時、ボクの携帯が振動した。

「? 人飼からメールが来タ」
「なんだって?」

 ボクはメールを開いた。

『たさかた』

 訳がワカメだった。

「…………」
「…………」
「……たさかたってなんだ?」
「知ラン」
「『他人との差がかなり開いた』の略?」
「ボクに聞くナ」

 見かけによらず、想像力豊かな奴だ。
 いや、この場合妄想力かな?
 しかし、「たさかた」とは一体なんだろう? 掻太の言う通り、何かの略語だろうか?それともタイプミス? ……タイプミス、か。仮に人飼がタイプミスをしたとしよう。どうミスをしたら「たさかた」になるんだ? 急いでいたからか? それとも、打つ時間がなかったからか?

「……もしかして、人飼は『たすけて』って言いたかったんじゃないカナ?」
「え?」
「た→た さ→す か→け た→て だとすれば、筋は通ル」
「あ、あ、あ、あーはいはい。なるほどね。でも、なんでこんなややこしいメール送ったんだ?」
「……時間がなかったんだヨ。」
「?」
「犯人に捕まっていて、まともにメールを打つ時間がなかったんだヨ」
「!」

 ボクと掻太は立ち上がって食器を片付け始めた。

「……掻太、5限目と6限目の科目ってなんだっケ?」
「どうせどんな科目だってサボるんだろ? 教えたって意味ねぇよ」
「それもそうだナ」

 ボクは下駄箱に走る。

「針津岳の最寄り駅ってドコ?!」
「それよりも早く着くモンがある!」
「エ?」
「とにかく来い!」

 ボク達は靴を履いて学校を出て更に走った。

「一体ドコに向かってるんダ?」
「俺ん家」
「ア?」
「俺ん家!」

 そのまま走って数分。掻太の家に着いた。そのまま掻太はガレージに入る。

「オイ、もしかしテ……」
「これかぶって」

 ボクはヘルメットを渡された。

「正直、2ケツは初めてだ」

 掻太はヘルメットをかぶりながら言った。

「それでもいいなら、早く乗りな。」
「……恩にきるゼ」

 ボクは、掻太のバイクにまたがった。
 うわぁ、これハーレーだよ。正式名、ハーレーダビッドソン。
 おおブルジョワ。

「ナビ頼むぜ」

 掻太はエンジンをかける。

「OK」

 ボクは雑誌を開いた。

「とりあえず、大通り出テ」
「わかった。」

 ボクはヘルメットをかぶって、ゴーグルを着ける。

「さぁテ……」

 ボクは掻太に聞こえないように呟いた。

「つまらなくなってきやがっタ」

 ボク達は、走り出した。

++++++++++

 ボクから見た人飼とは。
作品名:Gothic Clover #02 作家名:きせる