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Gothic Clover #01

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 夜の学校。
 家庭科室にて
 そいつは言った。

「この世界には狩る側と狩られる側の2種類が存在する。何故彼らは獲物を狩るのか? それは生きるためだ。生きているからこそ狩ることを求める。そう思わないかい?」

 そいつは振り向きながら質問した。誰に?

「ねぇ、人飼さん?」

 そう、人飼だ。
 彼女の体はロープで拘束されている。でも、別に慌てているワケでもない。怪我もこれと言ってまだしていない。
 まだ、だけど。

「私だって生きるために狩る」

 そう言いながらそいつは冷蔵庫から皿を取り出した。
 中身は?

 眼球だ。

 そいつはその皿を持ったまま更に言った。

「生きるために何故、彼らは獲物を狩るのか? それは腹がすいたため、胃を満たすため、そして、栄養を供給するためだ。」

 そう言いながらそいつは皿の上の眼球に胡椒をかけてゆく。

「しかし、例外がある。胃を満たすためでなく、満足感を得るため、快楽を得るために狩りをするモノもいる」

 そう言って、そいつは皿の上の眼球を

 食べた。

 くちゃくちゃと噛む
 噛む
 噛む
 口から液体がこぼれ落ちる。
 そして飲み込んだ。

「ぷはぁ」

 吐息が漏れる。

「例えば、人間だ。人はまさに、快楽のために生物を狩る。飼育したものを食えばいいというのにね。だが、人はそれでも狩り続ける。銃を担いでの狩猟がまだ認められているのもその為さ」

 そいつは、
 瀬水傍嶺はそう言ってスプーンを人飼に突き付けた。
 犯人は眼球をホルマリン漬けにして保存するなんてしていない。
 愛でてもいない。
 犯人は眼球を食べていたのだ。
 御丁寧にも味をつけて。
 現場にお酢のキャップやら、ケチャップやらがあるワケだ。
 なるほど、グルメな殺人鬼だ。

「君の眼球はとてもきれいだ。是非、食べてみたい」

 そこでボク達は出るコトにした。

「そこまでダヨ」

 ボクと掻太はドアを開けて瀬水傍嶺の前に姿を出そうとし……。

「あれ、開かナイ」

 鍵閉まってるゥーッ!!
 いや、よく考えたら当たり前なんだけどさ!
 これから人を殺すって時なんですから、それくらい用心しますよね普通!
 あ、やべぇマジで開かない。

「うお、どうしようコレ」

 しばらくガチャガチャやっていたが、掻太に「どけ」と言われて素直にどく。
 なんだ、鍵でもあったなら早く言ってくれれば

「ちぇすと!」

 掻太の蹴りにより、ドアは轟音を立てて吹き飛んだ。
 ……よし、気にしないとこにしよう。

「お前等は……」

 身構える瀬水傍嶺。

「人飼の目はボクのモノダ。誰にも渡さナ……」
「お前の好きなようにはさせないぜ!!」

 掻太は「決まった……」と呟いた。
 馬鹿かお前は。ヒーローごっこじゃないんだぞ? というか、ポーズをキメるな。ポーズを。

「……どうして私だとわかった?」
「ボクが技術準備室であなたに『現場では調味料なんかも見つかっているそうですヨ。』って質問した時、あなたは疑問を抱かなかった」
「疑問?」
「普通ならこう考えるはずデスヨ?『どうして現場に入ってないはずなのに現場の状態を知っているんだ?』って。現場の前には教師が見張っている。生徒が入れるワケがナイ。ところがあなたは疑問を抱くどころか『マヨネーズやらケチャップやら何やら、一体何に使うんだろうね』と、更に現場の詳しい状態まで言ってしまっタ」
「この学校に起きた事件だ。生徒だって少しぐらい漏れた情報を拾っているかもしれないし、教師が現場の状態を知っているぐらい普通・・・」
「学校にある現場の状態はともかク、なんで学校外にある現場の状態まで知っているんデスカ? ケチャップは校内にありましたケド、あなたの言ったマヨネーズは学校外の現場にあるモノデス。酢もそうカナ? それは知らなかったケド。ま、どれも一般教師のあなたが知るハズがナイ。更に、決定的なことを言うとすれば、この情報は警察は『問題にしていない』んデスヨ。犯人を捕まえる証拠とさえも思っていナイ。それをアナタが知っているというのハ、やはりいささかおかしいでしょウ」
「……見たのか?」
「まぁ、ね。貴棚先生から部品のキャップを分けて貰おうと思ったノハ、現場にキャップを落としてしまい、そのキャップから犯人が自分だと特定されてしまうのを恐れたノデ、キャップが無い調味料という、いかにも証拠になりそうなモノを無くそうと思ったカラでしょウ?」
「……なるほどねぇ。ただの高校生にしてはいい推理力だ。将来、小説なんか書いてみたらどうだ? 幼稚園児が初めてミステリーを読むにはちょうどいいと思うぞ」
「そんなめんどくさい職業はお断りデスヨ。それにこれは推理なんて大層なモノでもない。ただのパズルだ。さぁ、人飼、さっさと帰ろうヨ」
「何を言っている……?」

 瀬水傍嶺は人飼の方を振り向いた。

「!!、貴様ぁあア!!!!」

 そしてキレた。
 まぁ、そりゃキレるよなぁ。
 ボクが話して気を引きつけている間に掻太が人飼の縄を解くなんて、反則に近いか。
 本当はこのためだったのだ。
 ただボクは瀬水傍嶺の注意を引きつけるだけで良かったのだ。ボクが言った「推理」とやらは本当はなんの根拠もないただの狂言だったのだ。その狂言がたまたま正解だっただけ。
 ボク達の目的は、人飼の救出。それだけだ。
 瀬水傍嶺が犯罪者だろうが何だろうが知ったこっちゃない。

「あー暇だった。ありがと」

 自由になる人飼。

「礼には及ばないぜ!!」

 だから、ポーズをキメるな。

「その目は私の物だぁぁぁ!!!」

 さすが犯罪者。
 狂ってる。
 ま、ボクも人のコトは言えないけど。

「貴様ら、全員喰ってやる!喰って喰って喰って喰って喰って喰って喰って喰って喰って喰って喰って喰って喰って一片たりとも残さず喰い尽くしてやる!!!」

 瀬水傍嶺は戸棚から包丁を手に持った。

「貴様から喰って……うぐっ」

 瀬水傍嶺の言葉は言い切る前に止まった。
 というか、あんなに激しい蹴りを腹にモロに食らって平気な人間は少ないだろう。

「だからポーズをキメるなっテ」

 ボクは呟いた。
 何故ボクは掻太と友好関係を築いているのか?
 確かに彼はそこら辺にいる愚民共よりはイイ奴だ。
 でも、そんな理由でボクが他人と友好関係を築くと思うのか?
 ボクが桐馘掻太と友達でいる理由。
 それは、彼が他の愚民共よりは使えるヤツだからだ。

「おらぁ!」

 掻太がまた瀬水傍嶺を蹴り上げる。

「てめぇみたいな下衆野郎、3分もかからねぇよッ!」

 掻太の叔父は空手家だと掻太から聞いた。話に寄ると、掻太に幼いころから、無茶苦茶な特訓をさせていたらしい。その実力は空手部から勧誘が来る程だ。
 戦闘力としては十分。その上、性格としてもまぁ、扱いやすい。

「ぎざまッ!」

 包丁を振り回す瀬水傍嶺。
 無駄だって。
 包丁の間を掻い潜って掻太は瀬水傍嶺を殴る。
 そろそろカナ?
 ボクは掻太と戦うのに夢中の瀬水傍嶺の背後に近付く。
 そして、

「てリャっ」

 首の後ろをチョップした。

「アッー」
作品名:Gothic Clover #01 作家名:きせる