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神様は赦してはくれない

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「お兄さま、世界が終わります」
「そうだね」

 私の言葉にそう答えると、お兄さまは静かに瞼を閉じた。

「ねぇ、お兄さま。もう直に世界は洪水の波に攫われます。生きとし生ける全ての存在が無に還るのでしょう。そしてその後―――神に愛された存在だけが復活するのでしょう?」
「ああ」

 お兄さまは小さく頷く。長い睫毛が閉じた瞼に陰影を施していてとても綺麗。世界が終わりの時を迎えても、ああ! お兄さまの美しさは変わらない……!

「きっと私たちは復活なんて出来ませんわね。私達を……兄妹で愛し合ってしまった私達を、神はお赦しにはならないでしょう」
「……残酷だね、神様は」

 私達は、たった二人だけなのです。いつからそうなのか分かりません。でも物心がついた時には、もう二人っきりでした。二人だけで、他の誰との接触も許されずに、この地下室で、ずっと過ごしてきたのです。
 人は愛する生き物です。ですから、私達が愛し合ってしまったのは必然ではありませんか。けれど……それでも……。

「神は赦しては下さらない」

 もう一度――念を押すようにそう告げる、私の愛するお兄さま。
 ああ、お兄さま。私はお兄さまだけでも楽園へと導かれて欲しいのです。それが叶うというのならば、私はどんな事にでも耐えられるというのに。

「……始まるよ」

 お兄さまがそう言うのと同時に、凄まじい轟音がこの地下室にまで響き渡りました。裁きの刻が来たのです。
 お兄さまの元へと駆けよると、お兄さまは私の手を取り、強く――強く握りしめて下さるのでした。

「愛している」
「愛しています、お兄さま」

 愛していると――他のものにも言えたのなら。
 愛していると、言える存在が他にもあったのなら。

 楽園にはどんな人間がいるのでしょう? どんな動物がいるのでしょう? どんな花が咲くのでしょう? 愛すべき存在がどれほどあるのでしょう?


 行けるはずもない楽園に思いを馳せながら、私はギュッと瞳を閉じました。



 轟音は、もう、そこに―――――