小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

魔導装甲アレン3-逆襲の紅き煌帝-

INDEX|35ページ/51ページ|

次のページ前のページ
 

第4章 そして未来へ(1)


 鬼械兵がセレンの前に立ちはだかった。
 逃げられないことを覚悟したそのときだった。急に鬼械兵が停止して床に崩れたのだ。その中でただひとり立っている女だ。
 金髪の鬣[たてがみ]を靡かせるライザ。
「逃がしてあげるからついてきなさい」
「えっ!?」
 状況が掴めず驚いた。
 ライザはセレンたちを裏切って隠形鬼――アダムと〈インドラ〉から消えたのだ。そのライザがなぜ?
「早くして、アナタといっしょのところ見られたらアタクシの立場も危うくなるわ」
「どうして助けてくれるんですか?」
 ヒールを鳴らしてライザがセレンの目と鼻の先に立った。セレンの躰に手を這わせたのだ。
「きゃっ、なにするんですか?」
「これよ」
 ライザはセレンのポケットから玉を取り出した。それは光を失っているが、どこかで見覚えがある。
「それって〈生命の実〉ですか!?」
「そうよ」
「どうしてわたしのポケットに?」
「彼が偽物とすり替えたからよ。アナタはこれを持って逃げる義務がある」
「彼ってもしかしてワーズワースさんのことですか?」
 ライザは頷いてから背を向けて、早足で歩き出した。
 心が温かくなり、ほっとした気持ちがセレンを包んだ。〈生命の実〉を奪ったわけでもなく、先ほどだって自分を逃がしてくれた。ワーズワースはやっぱり悪い人じゃなかった――とセレンはニッコリとした。
 二人は先を急ぐ。
 ドアの前で立ち止まったライザは、センサーに手と瞳をかざした。
 スライドして開いたドアの先は、乗り物の格納庫だった。走行用ベルトのついてない戦車やエアカー、飛行機などが格納されていた。
 その中からライザは一人乗りの飛行機を選んだ。真上から見た形は、角の丸い正三角形で、横から見ると中心に透明なドーム状の屋根が乗っており、その中がコックピットになっている。
「わたし操縦できませんけど?」
「自動操縦だから大丈夫よ」
「はぁ、よかった」
 ドーム状の屋根が開き、セレンがコックピットに押し込まれる。ライザはタッチパネルを操作して、自動操縦で行き先を決めているようだ。
 その操作をしながらライザは何気なく話をはじめた。
「アスラ城で隠形鬼から一時的に逃げることができたのだけれど、それ以上の逃げ場は残されていなかったわ。そんなアタクシの前に現れたのが彼だった。良い旅を――というのは彼の言葉よ」
 最後にライザがボタンを押すと、コックピットの屋根が閉まりはじめた。
 飛行機が静かに浮いた。
 セレンは屋根を叩いて口を動かしている。完全防音のために、なにを言っているのかわからなかった。
 艶やかに笑ってライザは手を振る。
 そして、ボソッと呟く。
「ああ、ハッチ開けるの忘れたわ」
 音速で飛び立った飛行機がハッチをぶち抜いて空に消えた。

 夜明けと共にテントの中でアレンは目を覚ました。
「どこだよ……ここ?」
 仮設テントではなく、生活感のあるテントだ。遊牧民が使用するゲルのようなものだろうか。
 外に出ると、ターバンを頭に巻いたよく日に焼けた少年がいた。
「起きたか」
 少し片言な口ぶりだ。
 アレンは頭を掻きながら答える。
「ああ、起きた。なあ、俺の連れはどうした?」
「死んでたから埋めた」
「……そっか。あんがと」
 寂しげにアレンは囁いた。
 あれからなにがあったのか?
 〈ピナカ〉を乱射しながらひたすら逃げた。セレンを探すつもりだったが、大量の鬼械兵に追われているうちに、フローラも復活して、いつアダムも現れるかわからない状態だった。そして、壁をぶち抜くと、夜が見えたのだ。追い詰められたアレンはそこから飛び出すしかなかった。
「必死すぎてなにも覚えてないや。あんたが俺のこと助けてくれたの? どこで?」
「砂漠の真ん中で屍体を背負って倒れた。死んでるかと思ったら生きてた」
「あんがと。でさ、ここどこ?」
「砂漠の真ん中」
「位置的な意味で、近くにある村とか」
 尋ねると少年は持っていた杖で遠い丘を示した。
「あの丘を越えたところに村があった。でも今は人間がいなくなった」
「死んだのか? それとも戦争で逃げたのか?」
「人間が機械になった。機械になった人間は人間に殺された」
「ふ〜ん」
 ナノマシンウイルスだろう。クーロンから近隣の村までもう広がっていると言うことだ。それよりも、機械人化した人間が殺されたというのが衝撃的だった。
 家族や友人か機械人化してしまったら、元の躰に戻そうとするだろう。それが無理でも殺すなんてことはできない。けれど、社会全体からすれば、人間も機械人化すれば脅威と見られるのかもしれない。さらに機械人化が伝染する可能性も考えたのかも知れない。
 少年はアレンの機械の片手を見つめた。
「おまえも機械だろ。手当てするときに服を脱がした」
「半分。俺のこと殺す?」
「敵でも脅威でも、ましてや食料でもない。殺す理由があるか?」
「ないな」
 〈ピナカ〉はアレンが携帯したままだった。服を脱がせて手当をしたとき、武器を奪われなかったのだ。いつの間にかできていた腕の傷は、薬草を塗られ包帯が巻かれている。視力を失った片眼に巻いていた布も新しい物になっていた。
「いろいろあんがと、じゃあ俺行くわ」
 アレンが歩き出した方向は村があるという丘のほうだ。
 だが、その足が止まった。
 少年はアレンではなく、空を見つめていた。
 飛空挺だ。
 〈インドラ〉がこちらに向かってくる。
 アレンは〈インドラ〉に向かって手を振った。
「お〜い」
 相手はアレンに気づいているだろうか?
 ゆっくりと降下してくる〈インドラ〉。これはアレンを迎えに来たらしい。
 仮設テントの集落から少し離れた場所に〈インドラ〉は降り、少ししてからエアカーがアレンに向かって走ってきた。乗っている人影が見える。ジェスリーだ。
 エアカーが停車してジェスリーが運転席から降りた。
「ご無事でしたかアレンさん」
「そっちこそ。俺のことよく見つけたじゃん」
「クーロンを偵察しようと飛行中、偶然アレンさんのエネルギー反応を検知しました」
「俺のエネルギー?」
「機械と人間の混ざった特殊なエネルギー反応なので、運良く見つけることができました」
 ジェスリーは辺りを見回して、再び口を開く。
「セレンさんはどうしましたか?」
「はぐれた」
「そうですか。詳しい話は船に戻ってからしましょう」

 操縦室にはリリス、トッシュ、ルオがいた。とりあえず、まだルオは大人しくしているらしい。アレンが〈ピナカ〉を持ち出したので、〈黒の剣〉がなければ〈インドラ〉は動かない。
 部屋に入ってすぐのアレンにトッシュが尋ねる。
「シスターはどうした?」
「はぐれた」
「おまえいっしょじゃなかったのか!」
「途中までいっしょだったけど、敵の基地ではぐれた」
 そして、アレンはこれまでのことを話して聞かせた。
 クーロンにある要塞〈ベヒモス〉のこと、セレンとはぐれたこと、ワーズワースのこと、無我夢中で逃げてそこの記憶がないこと。
 話を聞き終えたトッシュはアレンの胸ぐらを掴んだ。
「糞餓鬼、シスターを置いて逃げるとはどういうことだ!」
「ちげーよ、逃げ回ってたらそうなったんだから仕方ないだろ!」