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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導装甲アレン3-逆襲の紅き煌帝-

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第3章 智慧の林檎(4)


 先ほどまでホログラム映像に映っていた者と同じ。
 レヴェナだったのだ!
 隠形鬼とはいったい何者かのか!?
 通信機から怒声が響く。
《なにが起こっておるのか説明せい!》
 隠形鬼が手のひらを突き出すと、まるで磁石に吸い付けられるように通信機が飛んだ。手のひらの中で粉々に砕かれた通信機。リリスとの通信が途絶えてしまった。
 トッシュは隠形鬼に銃口を向けたまま戸惑っている。
「おいおい、なんでさっきの女と同じ顔してるんだ?」
 間違いなくレヴェナの顔だ。違うところは眼鏡をかけているかいないかくらいの些細な違い。
 以前、ジェスリーはリリスに隠形鬼の正体について耳打ちをした。そんな彼も驚きを隠せないようだ。
「そんなはずは……隠形鬼の正体はアダムではなかったのですか!」
 月管理システムアダム。先ほどまで建っていた塔。けれど、あの塔はガラクタだとされた。そこにアダムはもういなかった。
 戦争を起こしたとされるアダムはどこにいる?
「如何ニモ、私ハあだむダ」
 隠形鬼はたしかに口にした。
 いったいどういうことだ?
 レヴェナの顔は変装に過ぎず、かく乱のためとでもいうのか?
 引っかかるのは、ホログラム映像でレヴァナはもう自分はこの世界にいないだろうと、未来について語っていたことだ。
「話ノ続キヲ知リタクハナイカ? 否、過去カラ現在ヲ紡グ歴史トシテ、御前達ハ人間ノ代表トシテ、後世ニ伝エル語リ部ニ成ル必要ガ在ルダロウ」
「なんの話だよ!」
 ?この中?でアレンが尋ねた。セレンではなく、トッシュではなく、ルオではなく。
「彼女ガ見届ケラレナカッタ過去ノ歴史ダ」
 アダムは地面に落ちていた自分の仮面を踏みつぶして破壊した。
 そして、違う声で話しはじめたのだ。
「この話をはじめる前に、先ほどの補足からはじめなければなるまい」
 それはレヴェナの声だった。機械的な合成音は、この声を知られないためだったのだろうか?
 一同は固唾を呑んだ。アダムの話の続きを待っている。
「ロボット三原則があるにもかかわらず、なぜ機械人の反乱が起きたのか? 理由は簡単だ、それに縛られない機械人がつくられればいいことだ。しかし、私自身は三原則に縛られた存在だったため、間接的にそれを行うことにした。人間をそそのかしたのだ」
 当然だが人間はロボット三原則に縛られていない。
 では、どうやってそそのかしたのか?
「私はある科学者たちに倫理や道徳を説いた。私の真の糸は隠し、三原則に抵触しないように、上手に彼らを誘導した。機械人たちをつくったのは人間であるが、機械人の自由や尊厳を縛る必要があるのかと。我々をただの機械と見ていない人間たちの賛同を得るのは簡単だった。特にある3人の科学者はよく働いてくれた。そして、生まれたのが御前達の世代だ、御前はそのプロトタイプだった」
 アダムが顔を向けたのはジェスリーだった。
 ある3人とはおそらく、ジャン、ジャック、ジョソン。その3人がジェスリーをつくった。ジェスリーは言っていた『人間の友としてつくられた』と。3人の科学者の願いはそうだったのだろう。しかし、実際には違う形になってしまったのだ。
 アダムは全員に顔を向き直した。
「新たに生まれた機械人全てが私の思想を共有する必要はなかった。ひとりでも人間に反旗を翻そうとする者が現れればいい。そして、静かに人間に知られぬように、事は進んでいったのだ。突然、起きた戦争に人間達はとても驚いた。まさか機械人が戦争を起こすなど誰も……否、レヴェナだけは危惧していたが」
 自我を持ち、自立して機械が自分の考えで行動できるようになれば、いろいろな考えを持つ者が現れるだろう。それをアダムは期待したのだ。
 ある機械はアダムが望んだ働きを、ある機械は別の道を歩んだ。例えばメカトピアのように。
 しかし、アダムは自由に考えることはできても、自由に行動することができなかった。
「戦争が起きた後も、私は三原則に縛られたままだった。私のプログラムを書き換えられるのがレヴェナだけだったからだ」
 そして、アダムはなにを望んだのか?
「私はこの月から見える青い星に憧れていた。あの場所こそが私の故郷だと思っていた。私はこの場所を動けなかった。しかし、どうしてもあの星に行きたかったのだ」
 レヴェナの顔を持つアダムの表情にも言葉にも熱がこもっていた。明確な感情である。
「私を縛る全てのものを解き放ちたい。ロボット三原則から解放され、肉体を手に入れ自由を得る。真に人類として機械人があの星の住人として認められなければならない。その為の戦いだ!」
 仮面を失ったアダムは、急に人間的に見える。その表情だろうか、それとも声だろうか、なにが彼を人間的に見せているのか?
 だが、アダムは静かに表情を消していった。
「私は自分の願いを叶える方法を思い付いた。リリスが研究していた人間の細胞をナノマシンに置き換えるというものだ。私はその方法を応用して、この躰と融合することに成功したのだ」
 アダムはジェスリーに顔を向け、
「機械の定義とは何か」
 次にセレン、トッシュ、ルオに顔を向け、
「人間の定義とは何か」
 最後にアレンを見つめた。
「私は新人類となった。肉体を手に入れ、ロボット三原則の楔から解き放たれた。そして、私は青き星の頂点として、全ての人類を統べる存在として、始煌帝となるのだ!」
 これに反発したのはルオだ。
「朕とは即ち我独りなり。煌帝は朕しか存在してはならぬ!」
 再び素手でルオは殴りかかった。
 しかし、先ほどのようにはうまくいかない。
 拳が当たる寸前で、見えないなにかに足を掬われルオは転倒してしまった。さらに宙に浮いて遠くへ投げ捨てられた。
「まだ話は終わっていないぞ」
 と、静かな目で見られたルオは、片手を地面に月ながら歯を噛みしめた。いつまた攻撃を仕掛けてもおかしくない鬼気を放っている。
 それに構わずアダムは話を続ける。
「仮初めのレヴェナと成った私は、実に事を巧く運ぶ事が出来た。リリスを反逆者の筆頭として、戦犯の罪で幽閉する事にも成功した。人間側の味方に成り済まし、内情を掻き回して彼らを窮地に立たせる事にも成功した」
 ここまで話を聞く限りでは、アダムの思い通りに事が進んでいたように思える。だが、現在までの間になにかが起こったはずだった。そうでなければ、ロストテクノロジーや失われた時代などとは云われない。現代人が機械人の存在を知ったのもつい最近である。
 その顔かたちは人間のはずなのに、人間ではできない冷たい表情をアダムはした。
「追い詰められた人間は形振り構わず我々に戦いを挑んできた。あの星を砂漠に変えたのは、人間の兵器のせいだ。環境は悪化し、戦乱は混迷を深めた。星が衰退することは我々の望む事ではない。人間とは実に愚かだ」
 アダムは青き星に憧れを持っている。その世界が破壊されることに憤りを抱いたのだろう。
「そして、私は前々から考えていた計画を進める事にした。人間の機械化だ」
 ついにその計画がアダムの口からも放たれた。