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○○トンネルの幽霊

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俺が大学2年の夏休みに経験した本当の話です。

 その夜は、男ばっか4人ぐらいでウチに集まって飲んでて、夏だしってことで、怖い話とかして盛り上がってたんだ。そのうちにみんなのってきちゃって肝試しに行こうぜってことになった。車で来てたA(飲んでなかった)に車出してもらって、地元で有名な心霊スポットだった○○トンネルに行くことになって。トンネルに着くまではみんなテンション高くて、特に高校まで空手やってて喧嘩とか強かったBは、「マジ幽霊とかいるわけねー」みたいなことばっかり言ってて、今思うとゾッとするけど、遊び半分だったんだな。
 で、そういうテンション高めの感じでトンネルについた。夜中だし、噂話に影響されてるせいかさすがに薄気味悪い。古いからトンネルの中は真っ暗だし、まわりに生えてる木とかも異様に不気味に思えた。でもAもBもすげえはしゃいだ感じになっちゃってて、当然車から降りてトンネルに入るって言い出して、俺は怖い話とか実は苦手なんだけど、びびってると思われるのもしゃくだから、ついてくことにしたよ。でもここまできて、さっきからちょっと顔色の悪かったCが、
「俺はいかない。ここはマジでヤバイ」
 とか言い出した。Bは「なにお前霊感きどってんのww」とか煽ってたんだけど、Cは青白い顔をして「マジでヤバイって。絶対なんかある、入らないで帰った方がいい」って一生懸命言うわけ。俺はあんまりCがマジな顔してるからすごいビビっちゃったんだけど、幽霊はいないとか言った手前か、Bはかえって面白がっちゃって、「怪しい奴がいたらボコるしww」みたいなノリで車を降りちゃった。Aと俺はとうとう震えだしたCが気になったけど、Bについて行くことにした。
 トンネルの中は暗かったけど、そもそもそんな長いもんじゃなかったし、すぐに出口が見えてきた。ちなみにトンネルにまつわる噂ってのは昔ここで事故に遭った女の幽霊が出るとかそういう話で、トンネルの中で白い服の女とすれ違うともうアウト…ってことだった。で、俺たちは何事もなくトンネルを抜けた。Bが拍子抜けしたみたいに「なんかつまんねぇなあ、なにもいないじゃん」って言ってた。俺は暗いし怖いし、出られて正直ほっとしたけどね。で、ちょっとトンネルの先まで歩いていってみて(ほんとになにもない山の中って感じ)、Aが「Cも待ってるしもう戻ろうぜ」って言うのを合図にして、車に戻ることにした。
 そしたらBがニヤッと笑って、
「あいつもフカシこいてたし、ちょっと脅かしてやろうぜ」
 Bの案を要約すると、なんかに遭ったふりしてギャーギャー騒ぎながら車に戻る、そんでちょっと脅かしてネタばらしして、ってことだった。Aも俺もその話を聞いてちょっと面白いなと思った。トンネルは短いから、みんなでせーのでトンネルに入って、わああとかぎゃああとか絶叫しながらトンネルの中を走ったよ。ちょっと走ると暗さにも目が慣れてたんで、他の奴らの顔も見えた。Bはすげえ迫真の演技って感じの顔だったけど、Aはちょっとニヤニヤしてた。
 車のところまで一目散に戻るとBは車の窓をバンバン叩いて、「早く開けてくれ!!!」とか大声で叫んでた。ちょっとやりすぎじゃないかと思ったけど、よほどCが車から降りなかったのが気にくわなかったのかな、とか考えてた。Cが「どうしたんだ」とか言いながら車の鍵を開ける。
「す……まった」
「なんだって?」
「すれちがっちまったんだよぉ、白い服の女とよぉ…」
 Bは泣きそうだった。演技のうまい奴だったんだな、と思った。でもなにかおかしい気もした。そのBの様子を見てて、Cもまた青白くなってきちゃって、「やっぱり…」とか「嫌な感じがしてきた…」とか言い出した。Aは笑いをこらえてたけど、俺はなんか笑えなかった。
「早く出よう」
 Bがそう言うので車はトンネルを離れた。予定だとそろそろネタばらしをしてもいい頃だ、と思ってたら、Aが「そろそろほんとのこと言ってもいいんじゃねーの?」って、まだ震えてるBに声をかけた。でもBはなんかブツブツ言うばっかりで、さすがにこれはおかしいと思ったんだよ。
「B、どうしたんだよ」
「だから、すれちがったんだよ、女とよぉ!お前ら見てねーのかよ!?」
 Aも俺もビックリして顔を見合わせたよ。そんな女なんかいなかったんだ。いつ見たのかって聞いたら、トンネルの中を全力失踪してたときだって言う。暗くて見えなかったのかと思ったけど、俺は他の奴らの顔とか見えてたし、白い服が見えないはずがなかった。Bが俺らのことも脅かそうとしてるのかとも思ったけど、そういう器用な奴じゃない。Cも青白いのを通り越して真っ白な紙みたいな顔色になってた。Bがほんとに女とすれ違ったんだってじわじわ理解できてきて、めちゃくちゃ怖かった。
 それでみんなで震えながら俺のウチに帰ることになった。で、車から降りたら、Aが「うわっ」って悲鳴をあげたんで、なにかと思ってAのそばによったら…車の後部座席うしろの窓ガラスに、一面に手形がついてたんだ。Bが叩いてたのは助手席のドアだから間違ってもBの手形じゃないし、それは血や泥で汚れたみたいな汚い手形だった。それを見てBは、「俺はもうダメだあ!!!!」って叫びながら、すごい勢いで車のそばから離れて、走っていってしまった。手形がついてたのは、Bが座ってた座席の側だけだったんだよね。Bはそのままいなくなっちゃったんだけど、みんな呆然としちゃってて後を追えなかった。部屋に戻ったんだと思ったら、俺の部屋の前にはBはいなかった。
 Bは翌日自分の部屋から見つかった。白い服が、とか、もうおしまいだ、とかブツブツ言ってて、目の焦点もあってなかったらしく、大家さんが実家とかに連絡して、今は精神病院にいるらしい。俺、A、Cは、Bが見つかってから慌てて寺でお払いをしてもらって、一応今のところは無事に暮らせている。

 ただAの車についた手形はどんなに洗っても落ちなかったらしく、結局車を廃棄処分にすることにしたらしいです。
作品名:○○トンネルの幽霊 作家名:nabe