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ヒオウ・ヒナタ~~溺愛魔王と俺様~~

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俘虜




「ヒナタっていまいくつなの?」

ぼんやりと暇そうに椅子の背に腕を乗せて椅子にまたぐように腰掛けていたヒオウはふと聞いてみた。

「え?うーん、多分15歳くらい?」
「何それ。」
「いやー僕ってひろわれっ子だからさあ、だいたいしか分からないんだよな。」
「ああ、そういえばゲンカクの養子だったっけ。ふーん。ほんとに15くらい?」

腕に頭をのせてヒナタを見上げる。

「何でだよ。」
「んー・・・だって、ねえ。そういやナナミちゃんはいくつなの?」
「16。ジョウイが17なんだ。確かに子供の頃から僕が1番小さかったし幼かったから16よりは下ってのは間違いないよ。」
「まあ、確かに上だとは思わないよ?」
「なんだよ、僕が小さいっていいたい訳?」
「あはは。まあ、その、幼く見えるよね。だいたいそんな格好に違和感ないってのがおかしいでしょ?」

2人は今ヒナタの部屋にいた。

ヒナタは着替えており、ヒオウは暇そうにぼんやりとその様子を見ているところだった。

「あは。似合うー?だってこれから舞台なんだよな。カレンと。やるからには気合入れてやらないとさ。」

ヒナタは明らかに女装していた。

いつもの髪の色と同じ茶色のロングヘアー(しかし金の輪っかはついたままである)に、カレンの衣装とは違ったどこかの民族衣装のような牧歌的な服。
腕のところはパフスリーブになっていて丈は膝下のふんわりしたフレアスカート。それにエプロンをつけている。

衣装はとてもよく似合っている。
特に化粧をしている様子はないのに、どうみても女の子にしか見えない。
それでもやはりちゃんとヒナタに見える。

「残念ながらとてもよく似合ってるよ?ほんとに男の子?」
「失礼な奴だなー。一緒に風呂入ったこともあんだろー?」
「んー、だからもう少し下(あえて言わないけど13、4くらいかと・・・)なのかなーって。だって化粧もなしで女の子にしか見えないって、ねえ。それに普通女装ってするの嫌がるものじゃないの?だいたいそれ、何入れてるの?」

椅子に座ったままのヒオウは、鏡の前で後ろ向きになり点検しているヒナタの膨らんだ胸元を指す。

「別に僕は女装はいやじゃないよ。まあ意味も無くするつもりはないけどさ。要はどんな格好をしても僕は僕だし。」
「わお、男前。」
「茶化すなよなー。んでこれはさあ・・・」

前を開けて中身を取り出す。

「・・・ああ、肉まん・・・。」
「ちょうどいいだろ?んで終わったら食うし。」
「食べるって・・・。汗かくでしょ?」

あきれたようにヒオウが言う。

「別に僕がかく汗だし、自分で食べるってんだからいーじゃん。食べ物は粗末にしたらだめなんだからな。」
「はいはい。さすがだねー。」
「・・・もしくは隠れ僕のファンに売るってのもあり?」

ごそごそと肉まんをもとの位置にしまい込んでから、ふと片手を自分の顎にあててヒナタが呟く。

「いや、なしでしょ?何言ってんの。だいたい何隠れファンって。」

着替えが終わったようだと椅子から降りて伸びをしていたときに、呟きを聞いてヒオウは”は?”というような顔で言った。
ヒナタは首を傾げて”ん?”という表情をした後、ニヤリと笑った。

「何かね、いるらしい。隠れファンらしく表面には出てこないんだけどさ。僕のこの愛らしさに惹かれている、その、残念な事に男共が。あーあ、どうせなら女性のが良かったなー。」

ヒナタが手を後頭部で組んで、途中からはさも残念そうに言った。

唖然としたようにヒオウが言う。

「・・・。・・・ほんとに?っていうか何で分かるの?で、どうやって売るって言う訳?」
「?なんか動揺してる?や、最初は知らなかったよ?まあ今も誰だとか知らないからあんまし変わんないけどさ。で、ナナミがね教えてくれた。実はさーナナミの奴僕の身の回りの物を売ろうとしてたんだよー?ホイのまねかよ。いくらなんでもそれは止めてくれってさ、すぐに気付いた僕は言ったんだけど、どうも凄い売り上げを見せてるらしくって。だからといって下着とか売られたら嫌だから、妥協策として、売る物は僕が謁見してからって約束して許可したんだ、それもこっそりやるように言ってね。んであがりは折半ってことでね?だからきっとこの肉まんも・・・」
「いや、止めようね。ほんとそれは止めた方がいいから、ほんと。」
「そう?じゃあやっぱ自分で食−べよっ。」

ヒナタはのん気そうな様子で着替えた後の片付けを始めた。


・・・何、今の話?

だいたい何平然と話してる訳、ヒナタは?

ヒオウは呆れた様子で思った。
・・・どこから突っ込んだらいいか分からない・・・。

確かにこの盟主は自分が可愛らしい様子だという事を自覚していて、たまにそれを利用するところがあるのは知っている。
仲間を勧誘する時や誰かにお願い事をするときなどに、そうした方が効果があると分かっている時に。
・・・普段は俺様のくせに。

・・・だからといって、自分の物を誰の手に渡るか分からないってのに平気な訳?
闇で買うような奴なんて絶対変態じゃねーの?
どんだけお金に執着しているんだ(そりゃ自分も軍主をしていた時はそうだったが・・・)!?
ていうかナナミちゃんって・・・。
仮にも自分の義弟を?
女の子って・・・。

ヒオウはため息をついた。
他の奴なら実力行使で止めさせるが、さすがにナナミにそれは出来ない。

「どうしたんだよヒオウ。」

ぼんやり立っていたヒオウに、ヒナタは怪訝そうに声を掛けた。

「・・・いや、もうほんと何を言っていいのか。まあ君が気にしないのなら僕に止める権利はないけど・・・。・・・気持ち悪くない訳?」
「え?うん、まあ直接なんかこられたら無理だけど、僕の知らないところでの話だから実感がない訳だし。僕の物っつっても大したモンじゃないしさあ、使いさしのペンとかね。僕に直接実害ない限りはいいかなーって。」
「はあ・・・。・・・女装もさあ、よくやるね?そんな変な奴がいるかもしれない中で。」
「うーん、それだってその場で何かされたり言われたりしたらヤだけどさ、今のところ実害ないし。」
「・・・陰ではいいんだ?なんていうか・・・ドライ・・・?」
「なんだよー?何ヒオウのが衝撃受けてる訳?変な奴。そろそろ行こうぜー、向こうでも準備するしさあ。あ、この格好、熊と青い奴に見せに行こうっと。あいつら酒ばっか飲んで芸術にてんで興味ないのか見に来たことないんだよなー。この格好で宣伝に行かないと。周りにもいい宣伝になるしさー。ってことで酒場回って行こう!!」
「・・・ビクトールやフリックが酒噴出すところが目に見えるよ・・・。」

・・・もう何も言うまい・・・。

本当にヒナタは子供なんだ、ヒオウは脱力しながら思った。