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満月ロード

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 それから闘技場に、他国から来ていた警備の者たちが現れ、王を引き取らせた。
 人間の間では、亡くなってしまった者を葬儀し、土へ返していた。

「…なんか、こんな大ごとになると思わなかったなぁ」
「ははっそうだね」
「しかし…王が魔物と手を組んでいるとは」
「まぁ、手を組んでることは悪くないんだけど、組み方が悪かったね」
 
 そんな中、俺らは宿をとり、ルーフォンの手当てを行っていた。もちろんアマシュリがだが。
 いろいろと疲れ切ってしまっている俺は、眠ってしまいたい。眠ると言っても、コピーに行くというわけではない。コピーを作成し続けているというのに、魔力だの魔術だの体術だのを使い続け、溜まりに溜まった疲労を本当にとりたいのだ。
 もちろん、ルーフォンだって休みたいだろうし、アマシュリだって、シェイルに似た男の手当てなんて御免だろう。

 あの闘技場の中には、審査員として各国の王の使いが来ていた。今回の騒ぎをすぐに各国王に伝えたらしく、勇者となった証をきちんと取りたいということで、思ったよりも面倒な書類を差し出され、それにすべてサインを入れた。
 正式に決まりましたという印を、各国の王から頂くことになっているが、書類上のすべての手配は、アマシュリに任せてある。
 
「はい。手当て終了」
「っていうか、お前治癒魔術とか使えねぇのかよ」
「シレーナだって使えないだろう?(治癒魔法)」
「うるせぇな苦手なんだよー。もー疲れた。アマシュリ寝ようぜ」
 
 自分の寝床にくるまり、布団の片隅を上げ、アマシュリを中に招き入れる。
 どうして一緒に…とぶつくさ文句を言いながらも、魔王のお願いを聞き入れないといけない立場上、背中を掻きながら布団の中に入ってきた。
 アマシュリを一緒のベッドに入れた理由としては、かなりの疲労の中眠ってしまうと、自分にかけている魔法が解けてしまい、魔王としての姿が浮かび上がってしまう可能性があるためだ。起きるときは、だいたい布団をかぶっているし、ぐっすり眠ってしまいたいタイプの俺のとしては、朝が早いのなんて御免。必死に起こしてくるアマシュリが、俺の変化に一刻も早く対処してほしいからだ。
 



 次の日の朝、疲れた体は少し回復しており、まぶしい朝日がカーテンの隙間から射しこんでいた。
 窓際のベッドを選んだ以上仕方がないのだが、右腕を布団からだし、左側にいる魔王でもあるシレーナを胸に抱きしめ、護るように眠っていたみたいだ。布団に包まっているシレーナは、どうせまだ夢の中なのだろう。
 ゆっくりと這い出るように、欠伸をしながらベッドから降りる。すると、壁側に位置するベッドに眠っていたルーフォンが、俺の目覚めに気付いたみたいで、ゆっくりと体を動かしながら瞼を開けた。
 一瞬シェイルがいるのかと思った。
 せっかくシェイルのいない魔王と一緒にいれると言うのに、なんだかシェイルから離れた気がしない。

「起きたのか…」
「お前こそ」
「おはよう…」
「おはよう」
「まだそこにいるガキは寝てるのか?」
「ガキってシレーナのこと? 寝てるよ。起こすのが大変なんだ」
 
 もう一度布団に入り、潜っている魔王のもとに体を寄せる。
 ゆっくりと窓側の布団をめくり、シレーナの姿を確認するが、その姿は赤黒い髪を光らせていた。もう一度布団をなおし、もぐらせておく。
 シレーナの背中をこすりながら、耳元で「シレーナ」と呟く。

(起きてください魔王! 姿が!)

「んぁっ…?」
 
 脳味噌に直接話しかけると、ようやく起きたのか、姿を変えることなく体を起こそうとした。
 まずいと思い、上にかかっている布団に力を入れ、ベッドに再度戻してやり耳元で囁く。

「姿が…」
「ん? あぁ」

(えぇっとシレーナ…シレーナ)
 
 昨日の姿を必死に思い出しながら、ペンキで塗り替えるように姿を変えていく。
 その姿は相変わらず手早く、綺麗だった。
 少し髪をみださせ、ゆっくりと布団の中から這い出す。ボーっとした頭で周りを見まわすと、先日泊まった宿の景色だった。入口の方に目をやると、端にルーフォンの姿があった。どこか行っていたのだろうか。

作品名:満月ロード 作家名:琴哉