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満月ロード

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(どうした)
(西の洞窟から、ドラゴンがそちらの国に向かって行きました。何か操られている様子。近くに魔物の姿もありました。何か企んでいる可能性があります。気をつけてください)
(西の…)
 
 アマシュリも、きちんと聞き取れたみたいで、視界の端でうんとうなずいていた。
 次にテレパシーを送ってきたのは、そのアマシュリだった。

(私の友からのご連絡です。その近くにいた魔物は、どうやらこの国の王とつながりがある様子。闘技場に向かってきています。嫌な予感がします。早く試合を終わらせてください)
(えぇっそんな無茶な)
 
 そもそも、王と魔物がつるんでいると。しかも、西の洞窟に住んでいるドラゴンは、割かし大人しいほうではあるが、もともと強い種族。一度怒らせると、敵味方関係なく潰しにかかる。
 魔物や人間が扱える動物ではない。

「やりあう必要…? あるさ…」
 
 今の現状を理解していないルーフォンは、しっかりと構えた剣先を俺に向けてくる。

「先ほどの魔術。何かを省略した魔術に見えた。今までそのような魔術はあまり成功例がない。他にも持っているのだろう? 見せてほしいものだ」
「つまり今は、勇者を関係なしに、俺とやりあいたいってことかよ」
「そういうことだ」
「そうか。但し今は時間がない…」
「は?」
「悪いが、今はお前をあまり相手にしていたくないのだ。すまないが、負けを認めてはくれないか」
 
 あまりにもひどい言いがかりだ。理由にもなっていないし、ただルーフォンを馬鹿にしているようにしか見えない。
 ルーフォンの口が開く瞬間、場内にアナウンスがかかった。

『今の試合。シレーナ選手の勝利とみなします。もうすでに、ルーフォン選手は戦える状態ではございません。今回の目的は“死”の目的ではありません』

「なんだそりゃ…」
「許さないぞ!」
 
 その闘技場側からのアナウンスに、俺やルーフォンだけではなく、周りの観客からも、かなりの非難を浴びていた。しかし、そこを大人しくさせたのは、意外にも不服そうな顔をしていたルーフォンだった。
 剣を捨て、俺のほうを向いて座り、右足のひざを立て、その上に左手を乗せる。服従の姿。

「確かに、俺はもう戦える様子ではないみたいだ。負けを認めます。しかし、あなたの近くで戦いたい。是非シレーナ…いや、勇者様と同行させていただきたい」
 
 ルーフォンの言葉に、場内の人々が静まり返った。もちろん俺も静まり返り、どうすればいいのかが分からなかった。
 つまり、この時点で魔王兼勇者となったのだろう。
 静まり返った場内は、一気に勝利した勇者への歓声と、潔いルーフォンへの素晴らしさで響きわたった。
 
「…いいよ。但し、俺と同行するとなったら、魔王への道は少し遠くなるぞ?」
「それでも構わん。非道なことを行うようでしたら、仲間から離脱させていただきますが」
「構わんよ」

 そういって俺はルーフォンに向けて手を差し出した。
 驚く様子が嬉しかった。綺麗に整った顔の男が、表情を崩して驚くなんて、そう見れるものではない。ゆっくりと表情を戻し、ルーフォンは抵抗することなくそこに手を乗せ、ゆっくりと起き上った。
 
「ところで主催者。王よ。貴様は何を考えている」
 
 今後の行動について、俺はその場で王がいる方へ向き、大声で怒鳴ってやった。
 王は危険を避けるように作られた、特殊ガラスの向こう側で観戦していた。上から見下ろす姿。何かをたくらんでいるようにしか見えない。
 そんな王が、ゆっくりと立ち上がり、マイクに向かって口を開いた。

「ほぉ。どのことかわからないが、勇者が決まり次第大きな祭りを行おうと思っていた」
 
 そういうと、観客のほうがザワッとざわめき、魔物の土地の方角に影が見える。
 その影に入った観客や、その周りの人々がゆっくりと上を見上げた。
 もちろん俺も見上げたし、ルーフォンも見上げていた。どうしてこんなものがここにいるのかという様子で。
 現れたのは、大きな翼と大きな体。どんなものでもなぎ倒すような尻尾を持つ、西の洞窟に住んでいるドラゴンの一匹だった。
 東西南北のドラゴンにあったことはあるが、場所によってちょっとした特徴が違う。一つに色。西のドラゴンは、全体的にオレンジっぽく黒い色。腹の部分が白く、そこの部分だけが無駄に目立つのが特徴だ。
 そんなドラゴンが、背中に魔物を乗せて、闘技場の試合会場へと舞い降りた。


作品名:満月ロード 作家名:琴哉