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満月ロード

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第5話





「お人形…みたい。無防備だなぁ」

 アマシュリは、魔王が目を覚ますまで身の回りの警戒を任された。
 魂の抜けた人形のようになるから、その間だけ注意を払ってくれていればいい。そう言われたのはいいが、ここまで無防備で意識がないとなると、何かあった時に自信がなかった。少し騒げば起きる程度のモノだと思っていたが、どこから見ても起きそうにない。
 不安を感じながらも、壁に寄りかかり無防備に座っている魔王の前に、ちょこんとしゃがみ、周りを見回す。
 本当に、目を閉じていればきれいな顔つきをしている。今は姿をかえていても、ほんの少しの面影がある。口を開けば、ただの子供のようにわがままを言ったり、騒いだりしているだけなのに。
 人間が魔王を見たところで、あまり“魔王”だという印象からは、かけ離れているのではないのだろうか。もっと、凶悪な顔をしていて、強い魔力を放ち続けているイメージ。きっとそれが人間からの想像だろう。それを考えると、拍子抜けだ。ただのきれいな子供。そうとしか見えない。
 じっとみつめていると、後ろから嫌な気配が近づいてきた。
 感じたことがある。これは、魔王も気にしていた白髪長髪野郎。
 体をひねらせ、視線の先を見つめる。
 眠っているところを襲うだなんて、卑怯な真似はしないだろうが、警戒するに越したことはない。
 闘技場で支給された武器を握り、体勢を落とす。争いごとはあまり得意ではないから、今行われている試合に途中まで勝ち進んでいたのだって、幼いころに教わった剣術のみ。しかも、普通の長さの剣を振り回す力がないので、小さい体を利用して短剣にて勝ち進んでいる。そんなハッタリ程度の力がしばらく続いただけでも、奇跡に近いものだろう。
 本当に、この男に当たらないで終わったの事には、自分の運の良さに感動する。

「さっきから何なんだよおまえ」
「…別に。お前に興味はない」
「知ってる! シレーナをずっと見てるだろう」
「あぁ」
 
 本当に興味がないみたいだ。
 視線は一向にこちらを見ないし、意識を飛ばした魔王にしか目が行っていないみたいだ。

(魔王だと…ばれたわけじゃないだろうな)
 
 そう簡単にばれないし、人間が魔王の姿を知っているわけがない。知っていたら、魔王だって簡単に人間の地に足を延ばさないだろうし、シェイルが許さない。

「なんで」
「お前に理由を言う意味がない」
「はぁっ!? 聞いてるのは僕だ!」
「うるさいガキだな。どうせ遊び半分で来ているみたいだが、早々に諦めたほうが身のためだろう」
「なんであんたに言われなきゃいけない。でも、お前も勇者希望なんだろう?」
「別に…勇者じゃなくったっていい。勇者と同行だっていい。ただ、魔王を倒す名目があればそれで」
「もしかして、魔王とか魔物に大事な人を奪われたとかか…?」
「そうだが? ここはそういうやつか、賞金目的でしかないだろう」

 同情することができない。
 なぜならアマシュリだって弱かろうが魔物だ。人間の気持ちに左右されるわけにはいかないし、おとなしくやられるつもりもない。しかし、考えてみれば、賞金目的か魔物を殺したい。そういうやつらが集まったって仕方がないのだろう。
 考えるまでは、賞金目的か力自慢。勇者という肩書がほしいだけだと思っていた。この中には、本当に魔物を倒したいやつらがいるのだろう。

「もし、もしお前が勇者になったら、だれか連れて行くのか? それとも…」
「一人でなんて無理だろう。闘技場で見かける力のある奴を同行させるつもりだし、その辺は臨機応変に誰かを連れていく。一人だなんて、魔王に会う前に力尽きるのは目に見えている」
「へぇ、自信満々に一人で行くやつかと思ってた」
 
 嫌味を含めたつもりだというのに、アマシュリの言葉にうっすらと微笑んだ。
 しかし、最初に聞いた質問の答えをまだ聞いていない。どうして、魔王。シレーナを目の敵にするかのように、目で追い続けるのか。

「それより、何か用があったんじゃないの? どうしてシレーナばかり目で追うのか気になるんだけど」
「その男。強いだろう?」
「あ、あぁ。そこらへんのやつらよりは全然」
「会ったときに分かった。感覚で。でも、その力を闘技場で発揮しようとはしない。今のところ、雑魚ばかりだからどうにかなるが、他にはもっと強いやつらがいる。ここにいる以上、もう少し本気を出せと、忠告をしたかっただけだ」
「伝えておくよ」
 
 
 
 
作品名:満月ロード 作家名:琴哉