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漆黒のヴァルキュリア

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第二章 恵那の面影 2



 新しく仲間になったソイツを見て、俺は言葉を失っていた。
「え〜……」
 え〜、の後に、言葉が上手く続かない。
 背丈は、俺の五分の二くらいか? まぁ、誰が見ても、ソイツはガキに見える。というか、ガキにしか見えない。
 ――む、その可能性もあるか――
 俺はふと、別な切り口を思いついた。
「なぁフギン、お前たちの通信って、通信障害とかあったりするのか?」
 肩に留まるフギンに、そう訊ねてみる。
 しかし、フギンは胸元に手――もとい、翼の先端を当てて、自信たっぷりにこう答えた。
「例え神々の黄昏が訪れて、この世の終末がやってきたとしても、私――それとムニンの能力に、狂いなど生じるハズがありません。アストラル圧縮、アストラル送受信、アストラル展開と再生。全てのタスクは完璧に遂行され、ことごとく成功しております」
 専門的な話をされてもサッパリ分からんが、まぁ、絶大な自信があるのは分かった。ミスしてそうにないのも理解した。
 だったら……
「エ〜ナ〜めぇ〜〜〜〜〜〜!」
 俺はフルフェイスヘルムの内側で、満面に青筋を浮かべた。
「こんなガキがっ? どうやって! 巨人族と戦うっつーんだよ!?」
 思わず吐き出された咆哮に、しかしガキは臆せず俺を睨み付けてくる。
「……フン。確かに僕は非力な子供です。巨人なんかと戦う事はできないでしょう。まぁ、戦う必要もないんですけどね」
 ――ほう、肝は据わってやがんな――
 得体の知れない黒騎士――とはまぁ、俺の事だが――を相手に、対等に話してくるガキ。確かにタダもんじゃない。
 俺は剣を抜き、切っ先をガキに向けた。
「必要ない、とはどういう事だ? 戦えないってんなら、この場で斬って捨てるぞ? お前はまだエインヘルヤルじゃない。俺が斬れば、そのまま霧散するだろう」
 無論、これは脅しだ。ガキにそんな事をしても、後味悪いだけでしかない。だが、これでガキの態度が本物か、タダのメッキかは測ることができる。
 が――
 ガキはふてぶてしく微笑うと、口を開いた。
「ヒトにモノを訊ねる前に、ヘルメットを取って名乗ったらどうです? 素顔見せると、何か不都合でもあるんですか? まさか、僕が怖いとか?」
 ――面白ぇガキだ――
 そう思った。確か、エナも何か言っていた気がする。頭で戦うタイプだとかなんとか。そんな能力があるんなら、確かに貴重な人材だ。力バカばっかだからな? ヴァルホルの連中は。
 俺はフルフェイスヘルムを外すと、それを足元に捨てた。
「これでいいか? まぁ、ワケあって任務完了まで本名は名乗れんのだが、それは許せ。俺の事は、黒騎士とでも呼んでくれりゃあいい」
「……意外と若いんですね。黒騎士さん。カスガ……エナさん? あの死神のお姉さんも若いけど……でも、皆さん幽霊……なんですよね?」
「ああ、まぁ、幽霊……みたいなもんだ。実体化できるけど……って、カスガ? 誰だそれ?」
 不意に、俺はこのガキ――紳太の一言に気をとられた。『カスガ』。俺はその響きに聞き覚えがあった。正確には、『カスガ・エナ』という響きに。
 だが――
 ――生前の記憶……だと思うんだが――
 生前の記憶が断片的にしか残っていない俺にとって、思い出せそうで思い出せない。
「エナが名乗ったのか? お前をここに送ってきたヤツが?」
 俺がそう訊くと――
 紳太はニヤリと不敵に笑った。
「ここから先を知りたいなら、条件があります」
「……なんだよ?」
「僕を一軍の司令官に推挙して下さい」
 ガキの言葉に、思わず額に青筋が浮く。
 ――図に乗りやがって、クソガキが――
「フン……ま、それは実力を見てからだな。お前、将棋か碁はできるか?」
「そんなの三歳で覚えましたよ。どちらも」
「ほぅ、実は俺も碁と将棋は玄人跣なんだが、そうだな……せっかくだ、碁二回戦の将棋三回戦、計五回戦で勝負するか」
「お好きにどうぞ」
 俺の提案に、紳太は苦笑を浮かべる。まぁ見てろ。大人げねぇのは承知の上だ。ゼッタイ泣き見せてやるぜ。