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包丁

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「とぽん、とぽんとね、背後から音がするんだよ。ところが後ろには自分が今出てきた風呂しかない。誰もいない事は今出てきた自分が一番証明出来る。さあならばこれはどういう事だろう?とぽん、とぽん、水音は消えない。まあ結論から言ってしまえば、排水口が詰まっていたために時差でたまった水が流れていただけの話だったのだけれどね。僕はまず、窓から入ってきた不審者がこちらに来るタイミングを図っているのかと考えた。なら武器が必要だ、下着のみの間抜けな格好で手近な武器を探したけれど物干ししかなくてね、でも金属だったから頭に当たればまあやれるだろうと片手にはそれを、もう片手には包丁を握ったんだよ。とぽん、とぽん、水音は消えない。僕は決意して風呂場のドアを開けた。勿論誰もいなかったよ、犯人は排水口だったのだからね。
待ってよ、待って。話が此処で終わっちゃあなんのオチもないじゃないか。
僕は安心して踵を返した。いいや、返そうとした。
顔だけ振り向いたその先、出口にお面を被った黒づくめが立っていてね、僕の背中を突き飛ばしたんだ。風呂場だ、当然足を滑らせて前のめりに転んで、運悪く自分が持っていた包丁を首に刺してしまった。

わかったかい、僕は自殺なんかじゃあないんだよ。
まあどうやらそのお面さんは、僕の幻覚だったようなのだけどもね。まあ、よくあるノイロオゼというもので、だから脱衣所に包丁なんて置いていたのだよなあ」


アパートで一人暮らしを初めて初日、風呂場に出てきた幽霊は、なんとも気楽にそんな事を言った。
同居して半年。すっかり俺にも脱衣所の包丁の幻覚が見え初めてしまっている。
作品名:包丁 作家名:コウジ