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早稲田文芸会
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ストイコビッチのキックフェイント(笠井りょう)

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ぴったりな言葉で言うとすれば、「ぴったりな言葉が見える」というのは、「ぴったりな言葉が見える」ということだ。ある日の野球場を埋め尽くした人たちの命をたった一言で救った女の子もいたし、ある年ある村で起きた同時多発不審死の原因が、十年前から繰り返されてきた村民たちの何気ない言葉の積み重ねだったこともあった。とはいえ彼らにとってそれは生まれつきの便利な癖みたいなもので、いつ・どこで・誰に・何を・どうやって言うか見極めるなんて、感覚の鈍い私たち一般庶民の見苦しい努力でしかない。彼ら的にはただ言うか言わないかの問題でしかない。彼らには「それ」がいつでもばっちり見えてて、「当たり前過ぎてつまらない」「みんなに悪い」「してもしなくても別に一緒」とかの理由でいつもは「それ」をまるで無視して日々を暮らしている。「たまにうっとうしい」「なんかうるさい」「暇だから」とかの理由で彼らがたまに「それ」に触ると、ぴったりな言葉で言うとすれば、とんでもないことになる。とんでもないことに、とんでもないことが、とんでもないことになるのだ。少し精細を欠く言い方をするなら、いつまでもずっと残ったり、根本からがらっと変わったり、いきなり勢いよく動き出したり、遂に終わってしまったり、するのだ。えーっとね。そうだな。よく神々が舞い降りてくるとか、大地から湧き上がるとか、言うじゃん。あれってかなり雑な言い回しだけどまぁ外してはいなくて、平成風の比喩で言うなら、言葉を検索して選抜して陳列する速度と精度が許し難いほど優れた彼ら。近くで見てると、悔しくて殴ってやりたくなるけど、すぐさま数万倍の威力の言葉で鋭く正しく胸を貫かれる。