ツイノベの日 お題 「碁石」
った。民芸品やお菓子なんかじゃなく、河原の石を欲しがるなんて彼女らしい。
具合はどう? 体温計を見れば、ようやく37度台まで下がったところ。
無理してでも来いよ、とは言えずに一人で帰省した。年に一度の夏祭り。本当は連れて
行きたかったけど。
見たかったな、朔の日のお祭り。ねえ、田舎、恋しい? ふと不安そうな表情で尋ねて
くる。
大丈夫だよ、突然一人でいなくなったりしないから。苦笑しながら、今度は一緒に行こ
うな、とだけ答えた。
連れてきたい人がいるんだと、親父には報告済みだ。もちろん、墓石が答えるわけはな
いけれど。
向こうは涼しいよ、この部屋くらいかな。温度計を見ながら彼女を抱き寄せた。
作品名:ツイノベの日 お題 「碁石」 作家名:よしのちほ