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【リリなの】Nameless Ghost

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従章 第三話 襲撃(中)



 必殺を確信して振るわれた大槌の一閃はわき上がる緑の光壁の前にあっけなくその侵略を阻まれた。

「なに!!」

 ギンッという音と共にヴィータの驚愕の声が耳に届いた。

「なのは、待たせてごめん」

 会いたくて、会えなくて、待ちこがれて、それでも待ち続けられなくて、ずっとずっと聞いていたかった側にいて欲しかった声がなのはの耳に飛び込んでくる。
 なのはは目を開き、そしてしっかりと見えた。

「何者だお前。こいつの仲間か?」

 なのはの目の前を覆う白いマント、そして彼と自分を守る翠の光盾。その盾にあっけなくはじき返され、僅かに後退したヴィータは突然現れた少年に鋭い視線を浴びせかけた。

「パートナーだよ」

 翠の魔力光を足下に携え、美しいハニーブロンドの髪を風にたなびかせ、なのはのパートナー、ユーノ・スクライアはそう言ってニッコリと笑った。

「ちっ!」

 ついに援軍の到着を許してしまった。しかもこの少年は今まで追い詰めていた少女のパートナーを名乗った。ならば、たとえ戦闘不能に近い状態まで追いやったとしてもこの二人がタッグを組んで仕舞えばパワーバランスは元に戻ってしまうかもしれない。
 何よりも自分は既にカートリッジをいくつか消費してしまっている。一時後退し体勢を立て直さなければならない。
 ヴィータはそれだけのことを一瞬で判断すると、背後にあけられたビルの穴から離脱を敢行した。

『報告をユーノ。高町なのはの保護には成功したの?』

 高速で離脱するヴィータをそのまま見逃し、ユーノはすぐになのはの元に駆け寄り彼女の状態を確認した。

『ごめんアリシア。こちらユーノ。なのはの保護に成功。だけど、随分酷くやられたみたい。僕はこのままなのはの治療に専念するよ』

 ユーノはアリシアからの報告要請に応じ、なのはの状態を簡潔に報告した。

「アリシアちゃん、来てるの?」

 多少朦朧とする意識の中、なのはは喋るたびに痛む脇を押さえながらユーノに聞いた。

「うん、フェイトも来てる。もう、大丈夫だよなのは」

 ユーノはそう優しく笑ってなのはの頭を撫でつけた。

「そう、良かった……」

 なのははそう深く息を吐き出すと、そのまま気失うようにユーノの腕の中に倒れ込んだ。

「だ、大丈夫? なのは」

 あわててユーノはそれを抱き留め、先ほど診断した中でもっとも負傷の度合いが強い脇腹に手を当て治療の魔法を流し込む。もしも折れていたら魔法だけでは直しきれなかったが、幸い骨にヒビが入っているだけに留まり、ゆっくりとながらそれは治療されていく。

「にゃはは、なんか安心したら気が抜けちゃって……ああ……ユーノ君の手、暖かいな……」

 ユーノの魔力に前身が包み込まれ、なのはは安心すると同時にさっきまで体中を襲っていた痛覚が徐々に緩和されていくのを感じた。

「応急処置だけど、とりあえず目立った怪我は治ったはずだよ。いったんここを出よう。なのは、飛べる?」

 ユーノはなのはに肩を貸し、ゆっくりと立たせた。なのはは自分の足で立てると言いたかったが、少しだけ彼に甘えることとした。

「私は大丈夫だけど、レイジングハートが……」

 一時的に待機状態に戻ったレイジングハートは、なのはの手の中で光の明滅を繰り返ししていた。

《The damaging percentage broke through 30 %. If limiting to the general start-up, it is possible to operate but the strength that it is possible to finish enduring battle use can not be secured》(破損率が30%を突破しました。通常起動に限定すれば運用は可能ですが、戦闘使用に耐えきれる強度を確保できません)

 レイジングハートの声は実に冷静だったが、その言葉の端々には悔しさに満ちておりいつものように軽快な会話をするような余裕はないようだった。

『アリシアよりユーノ。そちらの状況は? まだ移動できない? フェイトが少し辛そうなんだ。出来れば応援に行ってもらえるといいんだけど』

 再びアリシアの念話がユーノとなのはの元に届いた。

『こちらユーノ。ごめん、アリシア。今はまだ……』

 移動は出来そうにないとユーノが伝えようとしたが、それに割り込むようになのはが念話をつないだ。

『アリシアちゃん、なのはだよ。私は大丈夫。すぐに移動するから、フェイトちゃんにはもう少しだけ頑張ってって伝えて』

「いいの? なのは」

「うん、なるべく足手まといになりたくないんだ。お願い」

「分かった」

『こちらアリシア。了解したよ、ポイントを指定するから速やかに移動して。そこから南東約120mのビルの上、私もそこに居るからよろしく』

『分かった、すぐに行くよアリシア』

 ユーノはそう言って速やかにアリシアとの通信を遮断した。

「じゃあ、なのは。少し飛ばすからしっかり捕まっててね」

 ユーノはそう言ってなのはの肩をつかみ、膝裏に手を差し込んで横抱きに抱き上げた。

「ちょ、ちょっとユーノ君。これは……恥ずかしいよぉ……」

 いつかドラマやCMで目にしたいわゆるお姫様だっこと呼ばれる形で自分がユーノに抱き上げられている事になのはは羞恥を隠しきれず、少し抗議の意味も込めて手をばたつかせる。

「ごめん。だけどこうするのが一番飛びやすいんだ。嫌だと思うけど我慢して」

「い、嫌じゃないよ。全然嫌じゃないから。あの、気にしないで……」

「うん、じゃあ行くよ」

 なのはは赤い頬を隠すように俯き、こくんと小さく肯いた。
 ユーノはそれを確認し、先ほどヴィータが飛び出していったビルの穴から身を躍らせ、相手に感づかれないようにするためビル合間を縫うように極低高度で飛び続けた。
 その途中、赤い光と金色の光そして橙の光が空中で折り重なりあいぶつかり合う光景が視界の端に映り、なのははフェイトがアルフと共に戦闘を続けていることを知った。
 自分は防御するしかなかった相手の攻撃だが、フェイトなら回避することが出来るだろう。それにフェイトは一人ではない。ただ、相手の防御能力や障壁突破能力は絶大なもので、もしもフェイトがそれを食らうことがあればひょっとしたら自分よりもあっけなく落ちてしまうかも知れない。
 なのはは安心感と不安の両方を抱え、飛行するユーノの身体をギュッと抱き寄せた。
 見上げると、ユーノも若干顔を赤らめているようだったが、その表情は凛々しい眼に支配され、それだけでなのはは身体が熱くなってしまう。

「やあ、高町なのは。久しぶりだね。君と戦場で会えるなんて思っていなかったよ」

 ユーノが指定されようやく降り立ったビルの頂上に立っていたアリシアは、フェイトに対する指向性の高い念話回線を絶やさずに指示を送り、その合間を縫ってなのはとの再開を祝い合う挨拶を交わした。

「あは、ちょっと身体がだるいよ。アリシアちゃんも久しぶり。ちょっと雰囲気変わった?」