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【リリなの】Nameless Ghost

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従章 第二話 開幕



 今回もやっかいな事件になりそうだと、時空管理局人事部責任者レティ・ローラン提督はそう呟いてため息をついた。
 ここ2ヶ月程度で頻発する魔導師襲撃事件。魔法資質の高い人間ばかりが狙われるこの事件は当初何処にでもあるような過激派テロリストの仕業だと思われていた。
 しかし、問題となったのは襲撃された魔導師のことごとくが何らかの手段で魔力のすべてを奪われた痕跡があるということだった。魔力の蒐集、リンカーコアの摘出と略奪はミッドチルダの魔法の中では相当に高度な分類に入る。それほどの魔法を乱発しその足取りがつかめないはずがない。
 しかし、現実はこの二ヶ月犯人達の足取りをつかむことが出来ない。
 それには三つの理由があった。まず一つ目が、目標があまりにも無秩序に出現すること、二つ目として目標が少なくともAAAランク相当の魔導師集団で有ること、そしてもっとも重要になる最後の項目として事件の中心と予測されている場所が第97管理外世界であるということだった。
 一つ目と二つ目はそれほど重大な問題ではない。目標のランダム性は詳しい統計を取ることが出来ればその次回出現予想ポイントはかなりの精度で割り出すことができる
 目標がたとえAAAランクの戦闘集団であっても所詮は少数精鋭。外堀を徐々に埋めていき、持久戦に持ち込めば先に根を上げるのは物量に乏しい方だと言うことは古今変わることのない真実だ。
 高ランク魔導師や才能有る新人はやはりもてはやされる風潮が根強いが、時空管理局の何よりもの武器は巨大な組織力にものを言わせた物量であるということは疑いのない事実なのだ。
 しかし、最後の項目は非常にやっかいというしかないことだ。管理局は基本的に管理外世界に介入することが出来ない。仮にそこに次元犯罪者が潜んでいるとしても、それはその世界の政府と政治的交渉を重ねた結果引き渡されなければならないのだ。
 管理局法の重要項目にある管理外世界に関する条文には、

『次元航行技術、或イハ其レニ準ズル技術ヲ保有シ無イ、或イハ保有シ無イト思ワレル次元世界ノ管理権ハ当該ノ定メル国家ニ有リ、其ノ政治体制、技術、文化、及ビ其ノ世界ニ於ケル有ラユル紛争ニ関シテハ、管理局ノ定メル次元管理法ハ是ニ一切ノ介入ヲ禁止スル』

 とある。
 また、別の項目には

『管理局及ビ其ノ他ノ次元世界ニ於ケル管理内外ニ関ワラズ、有ラユル文明ヲ有スル国家世界ハ管理外世界ト定メタル有ラユル国家世界ニ対スル捜査権、捜索権ヲ持タズ犯罪者ノ取リ扱イニ関シテハ当該ノ管理外世界ノ定メル法ノ範囲ニ於イテ決定サレル』

 とある。
 故に、たとえその世界で重大な次元犯罪が引き起ころうとも、管理局は本来ならばその次元世界の政府の許可を取らずして捜査に乗り出すことは出来ないのだ。
 これは、文明の劣る管理外世界の主権を守るために定められた法律なのだが、その次の条文の但し書きには、

「但シ、重大災害級ト認メラレル古代遺物ニ関スル技術デ有レバ、現地政府ノ認識外ニ於イテ耳、管理局捜査官ハ其ノ捜査権ヲ行使スル」

 とある。つまり、今回の魔導師襲撃事件において重大災害級と認定されるほどの古代遺物、ロストロギアがその背後に潜んでいるという証明が出来れば、管理局は当該世界、第97管理外世界"地球"の政府に発見されない方法を用いて捜査介入することが可能なのだ。
 ただし、その証拠がない。襲撃事件現場の残留魔力にはロストロギアが使用された痕跡はあるのだが、その反応が小さすぎるのか犯人の証拠消しが万全なのだ、そのロストロギアのランクや種類、用途などすべてが未だに不明のままなのだ。

 しかし、もう限界だとレティは思う。二ヶ月間何の進展もなかった。今この時でもおそらく魔導師襲撃事件は起こされているだろうし、それによる被害はこれより拡大の一途をたどるだろう。
 下手をすれば、こちらも犯罪者になることを覚悟して第97管理外に捜査介入をすることになるかも知れないとレティは下から上がってきた人事案に関する意見要望書に目を通す。

 その中で特にレティが興味を持ったのは、最近になってリンディが一人の個人契約の民間協力者を雇ったと言うことだった。
 半年前の事件、管理局においても有名になったプレシア・テスタロッサとジュエルシードに関する事件においてリンディは二人の民間協力者を得たと言うが、今回のように正規の契約を交わした間柄ではなかった。
 レティはそれに関するリンディからの報告書を立ち上げ、その内容に目を通し始めた。

「アリシア・テスタロッサ。民間人でプレシア・テスタロッサの実の娘。契約内容は……【翻訳】か……」

 レティは先月、久しぶりに休暇を会わせることの出来た友人リンディと飲みに行ったときのことを思い出していた。

「そう言えば、アースラの入港は今日だったわね」

 少し連絡を取ってみようかとレティは考え、それまで処理していた人事案その他を一度脇に避けると、モニターに通信ソフトを立ち上げ、友人が乗艦する次元航行艦にアクセスを開始した。

***

 それにしてもやっかいなことになっているなと、その同時刻頃アリシアも部屋に籠もりつつリンディのもとから上がってきた翻訳の案件を見て肩をすくめた。

「今日はゆっくりなんだね、お姉ちゃん」

 裁判が終了し、緊張が抜けたのか昼頃まで眠っていたフェイトは未だ眠たそうな眼をこすりながらアリシアと共用のベッドに座っている。
 アリシアはかなり早い時間から起き出して、現在抱えている案件の処理を行っているが、その様子からはそれほど重要なものではないのだろう。

「そうだね、昨日みたいな重要な依頼が入ること自体が珍しいから、普段はこれぐらいだよ」

 穏やかな口調で受け答えするアリシアだったが、フェイトに応えながらもその指は止まることなくキーを打ち続けているあたりのんびりしているとは思えない。
 ということは、昨日の依頼がどれほど過酷なものだったのだろうかと予測しフェイトは少し背筋が寒くなってしまった。

「あんたも結構無茶するねぇ。そんなんで良く身体が持つねぇ」

 ガチャッと言う音と共に浴室から姿を見せたアルフは、二人の会話を聞いていたらしく半ば呆れるように声をついた。

「私がいえたことじゃないけど、君はもう少し恥じらいというものを持ったらどう?」

 アリシアは意識の中に残るベルディナの男としての部分に神経を刺激されつつも、もてる理性を総動員してアルフから目をそらした。

「だってさぁ、風呂上がりは暑いじゃん。それにこっちの方が楽だし」

 そういってアルフは悩ましく突き出た肢体をぐるっと見回して軽くストレッチをし始める。

「だったらせめてタオルを巻くぐらいはしてほしいよ。誰か入ってきたらどうするつもり? 鍵かけてないんだよ?」

「別にいいじゃん、減るもんじゃなし」

 いや、たぶん何かが減る。おそらく、それを目撃してしまった者の理性ゲージか誇りのゲージなどが。

「無垢は罪悪にでありそれは周囲への迷惑の権化である……か……」

「んー? 何だいそれ」