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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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マ界少年ユーリ!

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「……ハァハァ(なに今の……全部夢?)」
 目を覚ましたその場所はどこかの部屋だった。
 見覚えのある部屋。
「ここって……さっきの場所じゃん」
 今見ていた夢と同じ場所にいた。
 ユーリはよっこらせと柩から這い出た。
 ピンクの壁紙、可愛らしいぬいぐるみの群れ、まるで幼いお姫様のような部屋だった。
「(なのにベッドが柩って)」
 趣味が破綻している。
 ユーリは辺りをじっくり観察した。
「(さっきの夢ってなんだったんだろう。偶然見たにしては出来すぎてるし、この部屋に残った思念……だとすると現実にあったことになるわけで、この部屋はカーシャの部屋?)」
 ぬいぐるみの中でなにかが動いた。
 ガサゴソ、ガサゴソ。
「誰かいるの?」
「ウキーッ!」
 ぬいぐるみ中から白いサルが飛び出した。
「本物のサル」
 グラーシュ山脈にのみ生息する珍獣ホワイキー。専門家やマニアだったら目から鱗のご対面だが、そんな知識ユーリにはなかった。ちなみクラウス国王はマニアらしい。
 部屋を飛び出したホワイキーをユーリが追う。
 かなりすばしっこいサルだ。まったく追いつけない。
 追いかけているうちにこの場所がかなり巨大な城らしいことがわかった。
 ホワイキーを追っていると、王の間らしい場所に辿り着いてしまった。
 玉座に続くレッドカーペット。その玉座の後ろには巨大な肖像画が掛けられていた。
「カーシャ?(でも今と雰囲気が違う。この絵のカーシャは金髪で蒼い眼だけど、アタシが知ってるのは黒髪で黒い眼だし)」
 気配を感じた。
 ユーリが振り向くと物陰にホワイキーがいた。
「ちょっと待っておさるさん!」
 待ってくれなかった。
 ホワイキーは姿を消してしまったが、その場所には缶詰などの保存食が置かれていた。
「(おさるさんがアタシにくれたのかな?)」
 でも缶切りがないので開かない!
「(プルトップ式にしてよ)」
 缶詰のほかにも缶ジュースもあった。コーンポタージュだ。
 とりあえずコンポタだけ飲むことにした。
「あ〜、あったか〜い」
 すっかりマッタリしていると、また気配がした。
 急いで振り向く。
 ホワイキーがこっちを見ている。
「そこで待っておさるさん!」
「ウッキー!」
 待ってくれなかった。
 ユーリはホワイキーを全速力で追いかけた。
 そして、長い長い廊下を走らされてやってきたのは――。
「この装置は……?」
 井戸のような穴。真っ白い光の渦が水のように満たされている。
「(古代の転送装置。いくつもあるけど、どこに通じてるんだろ?)」
 井戸のような転送装置は〈旅水〉と呼ばれ、世界の各地に遺跡として残っている。
 その〈旅水〉がこの部屋にはいくつもあった。まるでモグラ叩きのような光景だ。
 いつの間にかホワイキーはユーリの傍らにいた。
「ウキキー!」
「もしかしてここに案内してくれたの?」
「ウキー!」
「でもどこに通じてるのかわからない。文字が書いてあるんだけど、ぜんぜん知らない文字だし。ヴァッファートのところに行きたいんだけどわかる?」
「ウッキー!」
 ホワイキーは〈旅水〉の一つを選び、その前で呼ぶように飛び跳ねた。
「そこに入ればいいの?」
「ウッキー♪」
「ありがとね、おさるさん♪」
 ユーリはホワイキーを信じて〈旅水〉の中に飛び込んだ。
 光の玉が飛沫を上げ、光の波紋の中にユーリは消えたのだった。