マ界少年ユーリ!
ローゼンクロイツは白い毛皮を首に巻いている程度で、ルーファスはそれほど厚着ではない。なのにまったく寒そうにしていない。
子供は風の子という問題ではないのかあきらかだ!
ルーファスはポケットから何か取り出して、不思議そうな顔をしてユーリに尋ねる。
「これ使ってないの?」
「なんですかこれ?」
「クラウス魔導学院購買部オリジナル商品、使い捨てカイロだよ。太陽神アウロの力がどーとかこーとかで、どんな寒さでもへっちゃらだよ」
「……早く出せよ!」
ユーリちゃんのグーパンチ炸裂!
ルーファスの鼻血が雪を鮮やかに彩った。
さっそく説明書を読んだユーリは、背を向けておへその下にカイロを貼った。この場所に貼ることによって、全身がぽっかぽかになる仕様らしい。
「嗚呼、春のような心地よさ(まるでお兄様の温もりのよう)」
そんな幸せ気分のユーリは迫り来る危機にまったく気づいていなかった。
遠くを眺めていたローゼンクロイツがボソッと呟く。
「……雪崩(ふにふに)」
波というよりもはや壁。巨大な雪崩が三人を呑み込もうとしていた。
すぐさまローゼンクロイツは持っていた日傘を開いて盾にした。
慌てたルーファスはとりあえず盆踊り。
ユーリは雪の壁に満面の笑み。
「あはは、絶対死ぬし」
ズザァァァァーーーッン
雪崩はすべてを呑み込んでしまった。
作品名:マ界少年ユーリ! 作家名:秋月あきら(秋月瑛)