マ界少年ユーリ!
「ええっと、あのお店で一緒にスイーツを食べながら、アタシとビビちゃんとお話したのは覚えていらっしゃいますよね、ねっ?(あの楽しい思い出まで忘れてたらちょっとへこむ)」
「……忘れた(ふあふあ)」
ユーリちゃんショック!
「あはは、そ……そうですか。え、でも、〈猫還り〉をしてお店を破壊したのは知っていますよね?」
「……らしいね(ふぅ)」
〈猫還り〉のときの記憶はない。まるでタチの悪い酔っ払いだ。全部、あとから聞かされて自分がなにをしたか知るのだ。
以下、ローゼンクロイツはあとから聞かされた話。
「キミたちが外に出されたあと、ヤツの秘書が現れて事態を収拾したらしいよ。お店もヤツがお金を出して立て直すらしい……ヤツに借りを作るなんて苦笑(ふっ)」
本当に嫌そうな顔をしてローゼンクロイツは口元を歪めた。
ローゼンクロイツマニアのユーリには、?ヤツ?とその?秘書?の名前もわかっていた。
?ヤツ?とはクラウス魔導学院の学院長である。どうやらローゼンクロイツのパトロンらしいが、ローゼンクロイツはとても学院長ことを嫌っているらしい。
ローゼンクロイツのご機嫌を損ねるのも嫌だったので、ユーリは別の話題を振ることにした。
「ところで、こんなところでなにをなさっていたのですか? まさか、アタシを見つけてわざわざ声を掛けに来てくださったとか?(だったら、それって愛!)」
「……迷った(ふあふあ)」
「はい?」
「家に帰りたいのに学院から出られない(ふぅ)」
「……あはは、迷子になられていたのですね。だったら、アタシが送りましょうか?(さすがローゼンクロイツ様、そんなところが萌え)」
「別にいいよ、明日も授業あるから(ふあふあ)」
「……あはは、そうですよね。明日も授業ありますもんね!(アタシと次元が違いすぎる)」
もうこの話題には触れません。どうして明日も授業があるからとか、詳しい説明をするのも拒否です。
ローゼンクロイツはふあふあ歩き出した。
そんな後ろ姿を見ながらユーリは誓う。
「もうアタシは止めません。貴方は貴方の信じる我が道を突き進んでください」
そして、またローゼンクロイツは迷子になるのだった。
作品名:マ界少年ユーリ! 作家名:秋月あきら(秋月瑛)