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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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マ界少年ユーリ!

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第3話 OH エド捕物帖オウジサマン!1


 夜の街に警備隊の声が鳴り響く。
「そっちだ、そっちに逃げだぞ!」
 月華の薔薇が屋根から屋根へと飛び移る。
 それは真っ赤なドレスを着た影だった。
 風に靡く真紅の髪、咲き誇る薔薇のドレス、夜行蝶のようなマスク。その姿はマスカレードの華だった。
 王都アステアを賑わす革命家にして怪盗、救世主にして犯罪者、その名は薔薇仮面。
 自らその名を名乗ったことはない。あくまで薔薇仮面の名は新聞社などが付けた名前であり、その素性は一切不明とされている。
 路地から屋根を飛ぶ薔薇仮面に向けて銃弾が発砲された。
 夜を舞う優雅な蝶は手を翳したに過ぎない。それだけで全ての銃弾は地面に落ちてしまった。
 薔薇仮面は類稀なる魔導の使い手と称されていた。全ての攻撃は薔薇仮面を前にして屈するほかない。
「クソッ、そこから降りて来い!」
 警官隊の一人が怒鳴った。
 それを屋根から見下ろす薔薇仮面の口元が、微かな嘲笑を浮かべた。
 刹那、辺りは昼よりも明るい閃光に包まれ――薔薇仮面は姿を消した。
「見失うな、すぐに追え!」
「クソッ、なにも見えないぞ!」
 次々とあがる男たちの怒声。
 その声を一本先の路地で耳にしていたユーリ。
「なに今の光?(なんか男の声も聞こえたような気がしたし……?)」
 バイト帰りのユーリちゃんは、仮住まいにしている魔導学院の宿舎に向かっている途中だった。
「はぁ」
 ため息を落とすユーリ。
「早く次のバイト探さなきゃなぁ」
 初日からクビでした!
 しかも、トラブルを起こして追い出されたのでバイト代すら貰えなかった。
「(普段だったら絶対に訴訟に持ち込んでやるのに悔しい。そもそもアタシは人の上に立つことはあっても、人の下で働くなんて向いてないのよね)」
 今のユーリには訴訟を起こすお金すらなかった。
 それでもなんとか生きてます!
 食事は相変わらず誰かのおごりで、服はルーファスから慰謝料として買ってもらったが、それでも二日分のローテーションしかない。ルーファスも月明けの二日目にならないと、親からの仕送りが振り込まれないらしい。
「(嗚呼、お兄様……ユーリは今日もハングリー精神を鍛えています。でもできればお金と権力を取り戻したいです)」
 ユーリはまん丸のお月様に祈りを捧げた。
「空からお金とか降って来ないかなぁ……あっ」
 降って来た。
 ただそれはお金ではなく人だった。
 淡く輝く月に映る真紅の影。
「嗚呼、美しい……」
 ユーリが真紅の人影に見とれていた次の瞬間――。
「ブハッ!」
 顔面キック!
 空から舞い降りた薔薇仮面の足の裏を、上を向いていたユーリの顔面がナイスキャッチ。見事に踏みつけられた。
 鼻血を噴きながらその場に昏倒するユーリ。
 軽やかに走り去っていく薔薇仮面。
 すぐに薔薇仮面を追ってきた警備隊がこの場に現れた。
「薔薇仮面はどこ行った」
「おい、ここに誰か倒れてるぞ?」
 警備隊が輪を作って気絶しているユーリを囲んだ。
「怪しいやつだな。とりあえず連行してぶち込んでおけ」
 こうしてユーリは無実の罪でパクられてしまったのだった。