マ界少年ユーリ!
第2話 ドリームにゃんこ in 夢(む)フフ10
店内で大爆発が起きた。
「ユーリちゃーん!」
ビビの声が木霊した。
吹っ飛ばされて床に激突したユーリ。
「うっ……大丈夫、まだ死んでませんから」
ユーリは大爆発に巻き込まれたというのに、気を失わずにビビに笑顔を向けた。だが、服はボロボロで、髪の毛もボサボサだ。
体中が痛くてユーリは起き上がれなかった。
「あはは……モロに爆発してたら死んでたかも(とっさに気づいてクソ兄貴の臭いくつしたを思い浮かべたけど)」
ちょっと離れた物陰からビビが心配そうにユーリを見つめている。
「ユーリちゃん大丈夫?」
「ええ、なんとか生きてます。〈ドリームにゃんこ〉を見切ったかもしれません」
「今そっち行くね!」
「危ないから来ないで!」
「でもぉ!」
「動いたら〈ドリームにゃんこ〉の餌食になります。アタシはこの魔法の対処法を見つけたから大丈夫です(たぶん)」
一呼吸入れてユーリはさらに話を続ける。
「〈ドリームにゃんこ〉は精神攻撃の一種なんです。あのねこしゃん型風船にぶつかると、願望や欲望などを増幅させる夢を見せさせられ、その妄想をエネルギーに変えて大爆発を起こす。つまり自爆に追い込まれるわけですね(あはは、いろんな意味で恐ろしい魔法♪)」
ユーリは力を振り絞って立ち上がった。
そして、ちょっぴり胸の辺りがスースーすることに気づいた。
慌ててユーリが自分の胸を見ると――ない!
胸はもともとないけど、胸じゃなくて服が破れてなくなっていた。
すぐにユーリは両手で胸を隠した。
「(あ、焦るな、焦るな自分。大丈夫、大丈夫、ビビちゃんには背を向けているし、ローゼンクロイツ様はトランス状態だし、店員は気絶してるから誰にも見えないし見られてないハズ!)」
ユーリが床を見ると胸に詰めていた特製パッドが落ちていた。そこまでの距離はざっと二メートル。取りに行くと〈ドリームにゃんこ〉の攻撃範囲に入ってしまいそうだった。
「(焦るな自分。あのパッドは明らかに通常の物と違って、アタシが特別に発注して作らせた?胸の形?そのもの。あんなのが落ちてたら絶対に不審がられるし、アタシのだってバレたらヤバイ!)」
そーっとユーリは特製パッドに近づこうとした。
ネコ型風船が動きを止めてユーリを見る。
……ヤバイ、目が合ってしまった。
だが、ユーリは瞬時に手を動かした。
「秘儀〈他力本願〉発動!」
ユーリによって操られた武装店員がぶっ飛び、ネコ風船を突き破った!
「やった!」
気絶している者は無心状態なので、〈ドリームにゃんこ〉の妄想に支配されないのだ。
が、武装店員を操った瞬間に、ユーリは自分の胸から手を離してしまっていた。
「きゃっ!」
思わず声をあげてユーリは片手で胸を隠した。
「どうしたのユーリちゃん!」
物陰からビビが顔を出した。どうやら見られてなかったようだ。
「あはは、なんでもないでーす♪(マジ焦った)」
だが、さらにマジ焦る事態が起ころうとしていた。
ユーリが隙を作った瞬間、いくつものネコ風船が襲い掛かってきたのだ。
片手だけで武装店員を操るが追いつかない。
猫の鳴き声がそこら中に響き、ネコ風船がぶつかる瞬間――。
「クソ兄貴のパンツ!」
ユーリは叫んだ。
すると、眼前まで迫っていたネコ風船からプシュ〜っと空気が抜け、次々と床に落ちたではないか
どうやら萎える妄想をすると、ネコ風船は力を失って萎んでしまうらしい。
新たな風船がローゼンクロイツの口から吐き出される。まるで魂が抜け出ているみたいだ。
そんな光景を見ながらユーリはチャンスを見出した。
「今だ、ゆけーっ店員ミサイル!」
ぶっ飛んだ武装店員の頭突きがローゼンクロイツとごっつんこ!
足取りをフラフラさせたローゼンクロイツは、そのままバタンと倒れてしまった。
「ごめんなさいローゼンクロイツ様。でも、助かったぁ!」
その声を聞いてビビが物陰から顔を出そうとした。
「もう出ても大丈夫なの?」
「待った、まだ危険です、非常に危険ですからそこでじっとしていてください!(アタシがマジ危険)」
焦りながらユーリは床に落ちた?胸?を拾い上げた。
これでとりあえず一件落着した……のか?
作品名:マ界少年ユーリ! 作家名:秋月あきら(秋月瑛)