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タカーシャン・ソレイユ
タカーシャン・ソレイユ
novelistID. 70952
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「ホルムズの別れ、再生の海」

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「ホルムズの別れ、再生の海」

潮の匂いが、すべてを思い出させる。
乾いた砂の記憶は、もうない。
代わりにあるのは——果てしなく揺れる、海。

彼女は甲板に立っていた。
夜の海を進むタンカーの上。
遠くに見える灯りが、細く、頼りなく瞬いている。

この海を、あなたに見せたかった。

そう思ったとき、胸がわずかに痛んだ。



別れは、自分で決めた。
それなのに、なぜ波のように、何度も押し寄せるのだろう。

ホルムズの海は、静かに見えて、どこか緊張を孕んでいる。
世界のエネルギーが通る場所。
誰かの生活と、誰かの思惑が交差する海。

「どこまで行けば、終わるの…?」

問いは、波に砕かれ、消えた。



あの人の笑顔は、やさしすぎた。
思い出すたび、胸が締めつけられる。

「これも…愛なの?」

夜空には、星が散っている。
海面に映り、揺れながら砕ける光。

彼女は、手すりを握りしめた。

「星屑…私を抱きしめて」

涙はもう、流れない。
代わりに、塩の風が頬をなぞる。



エンジンの低い振動が、身体の奥に響く。
まるで、心の奥に残る未練のように。

「このまま、どこかへ流れていけたら…」

声に出すと、それはすぐに夜に溶けた。

無口な女になる
そう思うほどに、言葉は遠ざかっていく。



遠くに、小さな船影が見えた。
灯りがひとつ、揺れている。

その瞬間
確かに、声がした気がした。

「……」

振り返る。

誰もいない。
いるのは、海と、風と、
自分の選んだ別れだけ。



別れ際、彼女は笑って言った。

「元気でね」

そして、そっと唇を重ねた。

あのとき、何度も振り返った。
そのたびに見えたのは

泣いている、あの人の顔だった。



「それも、愛なの…?」



船は東へ進む。
夜が少しずつ、ほどけていく。

水平線の向こうに、かすかな光。

彼女は、唇を噛みしめた。

戻らない。
戻れない。

それでも



波は、何度でも岸に向かう。

壊れても、消えても、
また形を変えて、進み続ける。



朝日が、海を染める。

彼女は静かに目を閉じ、
深く息を吸った。

胸の奥に、まだ残る温もりを確かめながら。



この海は、すべてを運ぶ。
別れも、涙も、愛も。

そしてきっと
まだ名前のない、これからの自分も。