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タカーシャン・ソレイユ
タカーシャン・ソレイユ
novelistID. 70952
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「二度すれ違う人」

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「二度すれ違う人」

仕事で立ち寄った、名も知らぬ地方の漁村。
潮の匂いと、風に揺れる網。
どこか時間がゆっくり流れている場所だった。

帰り道、駅へと向かう細い道で、
ひとりの小さな老人とすれ違った。

背は少し丸まり、
歩幅はゆっくりで、
けれど足取りには、不思議な確かさがあった。

目が合ったわけでもなく、
言葉を交わしたわけでもない。
ただ、すれ違っただけ。

それなのに、なぜか心に残った。

そして二度目の訪問。

同じ道、同じ時間帯。
まるで何かに導かれるように、また駅へ向かう。

そして、また
あの老人とすれ違った。

偶然、なのだろうか。
それとも、この土地の時間の中では、
それが「当たり前」のことなのだろうか。

人は一生の中で、
何人の人とすれ違うのだろう。

そのほとんどは、名前も知らず、
二度と会うこともない。

けれど、ごくまれに
理由もなく、心に引っかかる人がいる。

言葉もなく、関係もなく、
ただ存在だけが、静かに残る人。

あの老人は、どんな暮らしをしているのだろう。
朝は何時に起き、誰と話し、何を思っているのか。

漁に出るのか、
それとも海を眺めるだけの日々なのか。

家には誰かがいるのか、
それとも、静かな独りの時間なのか。

知ることはない。
これからも、きっと話すこともない。

それでも

あの人は、確かに自分の人生の中に、
一度だけでなく、二度、現れた。

たったそれだけのことが、
なぜか、少しだけ世界を深くする。

人と人は、
つながらなくても、
触れ合わなくても、
どこかで影響し合っているのかもしれない。

ただ、すれ違っただけの人。

それでも、その人は
今日もどこかで、生きている。