その人の匂い その人なのです
人には、それぞれ匂いがある。
もちろん香水や体臭の話ではない。
もっと深い、説明のつかない匂いだ。
久しぶりに会った人に近づいたとき、
ふっと感じるあの気配。
「ああ、この人だ」
そう思う瞬間は、
実は顔よりも先に、
匂いが教えてくれているのかもしれない。
人は言葉を飾ることができる。
服も整えられる。
肩書きも名刺も作れる。
しかし匂いだけは、
ごまかすことができない。
なぜなら匂いとは、
その人の生きてきた時間が
ゆっくり染み込んだものだからだ。
優しい人には、
どこか安心する匂いがある。
誠実な人には、
澄んだ空気のような匂いがある。
逆に、
怒りや焦りに満ちた人には、
どこか落ち着かない匂いが漂う。
それは決して鼻で嗅ぐ匂いだけではない。
人間が無意識で感じている、
もっと深い感覚なのだろう。
人は人生を生きながら、
少しずつ自分の匂いを作っている。
生き方の匂い。
心の匂い。
時間の匂い。
それがそのまま、
その人の存在になる。
だから本当の意味で人を知るとは、
言葉を聞くことでも、
経歴を知ることでもない。
その人の匂いを感じることなのかもしれない。
そしておそらく、
人は気づかないうちに、
自分の人生を匂わせながら歩いている。
どんな匂いをまとって
人生を歩くのか。
それは
今日の生き方が
静かに決めているのだ。
だから私は思う。
その人の匂い。
それがもう、
その人なのです。
作品名:その人の匂い その人なのです 作家名:タカーシャン・ソレイユ



