ヨツハノクロバ (02)
―――通常通り、1秒の狂いもなく起床。ひどく気狂いじみていると感じる。
足元のタオルケットはグリーンとホワイトの横縞、混沌とした眠りから解放されたのだ。昨夜からの雨で気温は上昇し、湿度を含んだ空気が皮膚に絡み付いていた。わたしは浴室で身体を洗い終えるとキッチンでクリームソーダを作った。メロンシロップ&バニラアイスクリームのそのグラス脇には、おびただしい枚数の映画チケットが散乱している。毎日、色々な手段で1本の映画を観た。何故だか解らないがある種の脅迫観念によるものだと思う。昨日の午後、なにげなくハギスを食べさせるという店に入った。テーブル横の壁にはGlasgow市章がある。鮮やかなbird、tree、bell、fish...。スコッチウィスキーを少しだけ飲み、羊の胃袋を食べている最中、突如として映画館に行かなければ死んでしまうような感覚に陥った。すぐにバスを乗り継ぎながら遠距離の街まで向う。そこで上映されていたのは179分にもおよぶ1962年のアメリカ映画だった。冒頭の海岸に転がった軍用ヘルメットから物語は始まった。彼等はノルマンディー海岸より一斉に上陸すると内陸侵攻をしていく。教会の屋根に引っ掛かったパラシュート部隊の兵士、スコットランド部隊のバグパイプによる勇敢で無敵の行進、作品は驚くべきエネルギーとパワーに満ちていた。わたしは、ただひたすらその行為に溺れ、全ての映像を脳に刷り込みたいという欲求に支配されていた。その行為が原因なのか、ひどく奇妙な夢を見続けている。何かを手繰り、意図的に記憶の破片を繋ぎ合わせているような気がした。自己的儀式に間違はない。では一体「何」が欠け、「埋めて」いるのだろうか。
作品名:ヨツハノクロバ (02) 作家名:そにどり



