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タカーシャン・ソレイユ
タカーシャン・ソレイユ
novelistID. 70952
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人間は何を思い出しているのか

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記憶シリーズ 五部作

一 記憶する脳

脳は小さな器官だ。
両手にのるほどの重さしかない。

それなのに
人はそこに

人生すべてが
入っていると言う。

笑い声
別れの言葉
遠い日の匂い。

だが不思議だ。

人は多くを忘れる。
そして
ときどき突然思い出す。

脳は
保存庫なのだろうか。

それとも

必要な瞬間に
記憶を浮かび上がらせる

静かな門番
なのだろうか。



二 思い出す生命

初めて見る海なのに
どこか懐かしい。

初めて歩く森なのに
心が落ち着く。

生命は
一代限りの存在ではない。

長い時間をかけて
形を変えながら

海を泳ぎ
森を歩き
空を恐れてきた。

その無数の経験が

言葉にならないまま
体の奥に眠っている。

だから人は
ときどき

理由もなく
懐かしくなる。

それは

生命の記憶
なのかもしれない。



三 宇宙の記憶

夜空を見上げると
胸が静かに震える。

なぜだろう。

星はただ
遠くに光る
石のようなものなのに。

だが
人の体をつくる元素は

すべて
星の中で生まれた。

骨も
血も
脳も

遠い宇宙の
爆発の名残。

だから

私たちは
星を見るたびに

どこかで

帰る場所
を感じている。



四 既視感の正体

初めての景色。

なのに
心がつぶやく。

「ここを知っている」

それは
錯覚だろうか。

脳の
小さな誤作動だろうか。

それとも

時間の奥から
浮かび上がる

微かな記憶。

人生は
一本道ではない。

無数の経験が
重なり

似た光景
似た空気
似た感情が

心の奥を
そっと触れる。

その瞬間

人は

既視感
という扉を開く。



五 人間とは何を思い出す存在なのか

人は
未来を考える生き物だと言われる。

しかし
本当は

思い出しているのかもしれない。

生命が歩んできた道を。
宇宙が生んだ時間を。

脳は
ただの記憶装置ではない。

生命と宇宙をつなぐ
小さな窓。

その窓から
ときどき

遠い記憶が
光のように差し込む。

そして人は

ふと立ち止まり
こう感じる。

懐かしい、と。

その感覚こそが

人間という存在の
静かな証明
なのかもしれない。