空気という独裁
この国には、王はいない。
だが、絶対的な支配者がいる。
それは、空気だ。
誰も命令していない。
だが、逆らえない。
誰も責任を取らない。
だが、全員が従う。
それが、空気という独裁。
会議で異論が出ない。
出せないのではない。
出さないのだ。
場が凍る。
視線が泳ぐ。
沈黙が圧力になる。
言葉よりも強い統治。
それが空気。
法律ではない。
ルールブックにも載っていない。
だが最も強力な規範。
「みんなそうしている」
「今さら変えなくても」
「波風を立てるな」
空気は、
個人の勇気を迷惑に変換する。
昭和は同質性の時代だった。
均一は強さだった。
だが令和は分散の時代だ。
多様性を掲げながら、
同調を求める。
自由を語りながら、
空気を読む。
矛盾は、静かに制度化される。
空気の恐ろしさは、
自覚しにくいことだ。
誰も悪者にならない。
だから、変わらない。
独裁者は倒せる。
空気は倒せない。
なぜなら、
私たち一人ひとりが
その一部だからだ。
空気を壊す方法は、
大声ではない。
最初の一言だ。
「それ、本当に必要ですか」
その問いが、
場の重力を揺らす。
勇気は、英雄的でなくていい。
小さくていい。
空気に穴をあけるだけでいい。
独裁は外にあると思っている限り、
空気は続く。
だが独裁は、
沈黙の総和だ。
令和は、
沈黙をやめた人から変わる。
空気は読むものではない。
つくるものだ。
作品名:空気という独裁 作家名:タカーシャン・ソレイユ



